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インクジェットで高級スカーフを染め抜く

=低コストで環境にも優しい印刷技術=

2019年09月19日

最先端技術

研究員
芳賀 裕理

 2019年9月23日、パリで世界最大級のファッションショー「ファッションウィーク」が始まる。多い年には世界中から200近いブランドが参加するため、翌年の流行を左右する注目度の高いショーである。

 このショーに欠かせないのが、色鮮やかで高級感漂うシルクのスカーフ。仏エルメスなどの高級ブランドがデザインを競い合う。スカーフの模様は、どのように染め抜かれているのか。職人が一枚一枚、筆で描いているわけではない。実はほとんどが、「捺染(なっせん)」という印刷技術を使っているのだ。紀元前2000年頃に生まれたとされる布地の染色法の一つだ。

 捺染では布などを使い、染料が通り抜ける部分と弾かれる部分に分かれた「版」を作る。版画と同じで、多色刷りの場合は色の数だけ版が必要になる。この版に色が付いた糊(=染料)を塗って生地に押し当てると、糊が染み込んだ部分だけに絵柄が転写される。重ね刷りの場合はこの作業を色ごとに繰り返す。その後、水で余分な色糊を洗い落とすと完成。大変手間のかかる作業である。

 現在では工程の大部分が機械化され、ファッションショーで見るスカーフも大半はこうした方法で作られる。このほか、衣服やカーテン、自動車のシートなどさまざまな素材のプリントにも利用されるようになった。

 近年、この捺染に新たな手法が加わり、ファッション業界に変革をもたらしつつある。インクジェット(IJ)プリンターを使った「捺染印刷」だ。

 それには、大きく分けると二つのタイプがある。一つは、生地に前処理液を塗った上で、プリンターで染料を直接吹き付ける方法。対象が紙から布に代わっただけで、オフィスなどで使われるプリンターの印刷方法に近い。

 これに対し、プリンターで絵柄を転写紙に印刷する方法もある。この転写紙を生地に密着させ、熱を加えて絵柄を写す。Tシャツにアイロンで絵柄をプリントできるシートに似た仕組みだ。

 IJ方式の捺染の強みは、従来の手法と異なり、人件費のかかる「版」が不要になる点だ。このため多色刷りが低コストでできる。納期も従来の1.5~2カ月から3日~2週間と大幅に短縮できる。

 環境に優しい点にも注目が集まる。実は従来の手法では、糊を洗い流す際に大量の水を使う。しかしIJ方式ならば、洗浄に必要な水を半分以下に抑えることができるのだ。

 小ロット生産に向いている点も、環境保全に貢献する可能性を秘める。独立行政法人・中小企業基盤整備機構の調査によると、日本では年間約100万トン、枚数に換算すると33億着の衣類が破棄されている。リサイクル・リユースされるのはうち10%で、残りの90%は焼却処分されるという。英国でも2018年、英BBC放送が「(高級ブランド)バーバリーが2860万ポンド(約38億円)相当の売れ残り商品を焼却処分した」と報じている。

 衣類の廃棄量が多い理由の一つは、消費者の好みの多様化であり、商品の種類自体が増えているからだ。欠品を避けようと多めに生産する慣行も手伝って、大量の売れ残りが発生してしまうのだ。

 その点、IJ方式の捺染なら多品種・少量生産が可能であり、お客様一人ひとりのニーズに合致した衣服を必要な分だけ提供できる。売れ残った服に絵柄を加えるなどしてリユースすることもできるかもしれない。

 こうした背景もあり、IJ方式の捺染の世界市場は拡大している。インドの大手調査出版会社MarketsandMarketsの予測によると、18億ドル(約1900億円)規模とされる市場は2018~2023年に平均約6%で拡大するという。プリンター関連の展示会でも、捺染用の出品数が目立って増えている。

 ただし現在のプリンターでは、職人が手掛けるアナログ捺染ほど繊細な絵柄は描けない。しかし、将来は高級ブランド店で陳列されるシルクのスカーフもIJで捺染されるかもしれない。

20190919.jpg捺染用プリンター「RICOH Ri 100」
(出所)リコー

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