Skip to main content Skip to first level navigation

RICOH imagine. change.

日本 - リコーグループ企業・IRサイト Change
Skip to main content First level navigation Menu
Breadcrumbs

Share

Main content

地方創生第2期~社員「回遊」で「関係人口」拡大を

コンパクトシティが地方を救う (第20回)

2019年11月06日

地域再生

副所長
中野 哲也

高松市に匹敵!年間43万人減少した日本人

 日本人の数が減り続け、しかも減少ピッチを速めている。総務省が発表した住民基本台帳に基づく日本人の人口(2019年1月1日現在)は10年連続で減少し、前年比43万人減の1億2478万人となった。高松市(香川県)や富山市、長崎市といった県庁所在地に匹敵する人口が1年間で消えた計算になり、この減少数と減少率(0.35%減)はいずれも過去最大である。なお、外国人(前年比6.79%増の267万人)と合わせた総人口は前年比0.21%減の1億2744万人。

 都道府県別にみると、愛知が減少に転じたため、日本人の人口が増えたのは東京圏(東京、神奈川、埼玉、千葉)と沖縄の5都県だけ。増加率のトップは東京(0.56%増)でワーストは秋田(1.48%減)。また、関西圏(大阪、兵庫、京都、奈良)と名古屋圏(愛知、岐阜、三重)を合わせた減少数が東京圏の増加数を上回り、三大都市圏全体の人口も初めて減少に転じた。国・地方の思惑とは裏腹に、「東京一極集中」が一段と加速しているのだ。

 一方、厚生労働省の人口動態統計によると、2018年の出生数(=国内で生まれた日本人の子どもの数)は過去最少の92万人にとどまった。合計特殊出生率(=1人の女性が生涯に産む子どもの数)も1.42と前年から0.01ポイント低下し、人口の維持に必要とされる2.07程度には遠く及ばない。

 今後も25~39歳の女性人口の減少が確実視されており、出生率が劇的に改善しない限り、産声を上げる赤ちゃんの数は増えそうにない。出生率を都道府県別にみると、最高が沖縄(1.89)で最低は東京(1.20)。先進各国との比較では、フランス(2016年1.92)や英国(同1.79)、米国(2017年1.77)、ドイツ(2016年1.60)に差を付けられ、日本の少子化対策の遅れが際立つ。

地方創生第1期で悪化した「東京一極集中」

 人口減少時代の本格的な到来は以前から予測されており、政府も決して見過ごしてきたわけではない。2014年9月、安倍晋三首相は第2次安倍改造内閣の発足に際し、「最大の課題の一つが、元気で豊かな地方の創生」と強調。その上で、「人口減少や超高齢化といった地方が直面する構造的な課題に真正面から取り組み、若者が将来に夢や希望を持つことができる、魅力あふれる地方を創り上げていく」と公約した。

 首相は新設した地方創生担当相に2012年自民党総裁選で争ったライバルの石破茂・自民党幹事長(当時)を起用するなど、挙党態勢で地方創生に取り組む決意を示した。

 そして安倍政権は2014年末、まち・ひと・しごと創生「長期ビジョン」と同「総合戦略」(第1期=2015~2019年度)を閣議決定。長期ビジョンにおいては、「2060年に1億人程度の人口を確保」という野心的な目標を掲げた。

 具体的には、出生率が2030年に国民が希望するとされる1.8程度、2040年に人口の維持に必要とされる2.07程度まで回復すれば、2060年に1億194万人を確保できるという道筋を示した。その上で第1期総合戦略には、人口1億人確保に向けて「人口減少の歯止め」と「『東京一極集中』の是正」といった方針が盛り込まれた。

 一方、国立社会保障・人口問題研究所は2060年に人口が8674万人まで減少すると推計(出生・死亡中位ケース)しており、長期ビジョンは非常に高いハードルだ。

 今、第1期総合戦略は最終年度を迎えたが、結果として「人口減少の歯止め」が掛かったとは到底言えない。前述したように、2018年の日本人の人口減少数と減少率は過去最大であり、東京圏と沖縄県を除くすべての道府県で人口が減少。出生率も人口維持に遠く及ばない1.42にとどまった。

 また、安倍政権が第1期総合戦略で取り組んできた「東京一極集中」も、是正どころか逆に悪化している。政府の検証によると、東京圏と地方の間の人口移動では東京圏の転入超過が続き、その超過幅は2014年の10.9万人から2018年には13.6万人へ拡大した。このため、第1期総合戦略に盛り込まれた基本目標KPI(主要成果指標)の一つ、「2020年に地方・東京圏の転出入均衡」は達成できそうにない。

 そもそも範を示すべき政府による中央省庁の地方移転が、文化庁の京都移転や消費者庁の徳島への一部移転にとどまる。永田町・霞が関が相変わらずの「総論賛成、各論反対」では、東京一極集中の是正に取り組む本気度に疑問符を付けられても致し方あるまい。

 このように、安倍政権が掲げた2060年に人口1億人確保という野心的な長期的なビジョンは、第1期総合戦略の結果をみる限り、実現に向けて順調に進んでいるとは言い難い。「絵に描いた餅」に過ぎないのではないか―。政権が地方創生の長期ビジョンと第1期総合戦略を決定した5年前に抱いた疑念を、筆者は払拭できず逆に深めている。

訪日外国人は3000万人突破、消費額4.5兆円

 人口減少時代が本格的に到来したが、どの地方自治体も住民基本台帳に登録される人口すなわち「定住人口」を増やしたい、あるいは維持したい。減るにしても最小限で食い止めたい。だからこそ、各自治体は財政事情が厳しくても子育て支援や子ども医療費無料化、都市部からの移住促進などに歯を食い縛って取り組み、ライバル自治体と競い合う。それに必要な財源を増やそうと、ふるさと納税の争奪戦がエスカレートするなど、都市間競争はかつてないほど激化している。

 しかしながら現実には、日本全体の人口が減り続ける中、A市の人口が増えてもB市がその分減るという冷酷なゼロサム(もしくはマイナスサム)ゲームなのである。これまで当連載企画で取材に応じていただいた各自治体の首長はいずれも課題を山ほど抱えながら、誠実に取り組む首長ほど疲弊していた。そして前述した通り、地方から東京圏への人口流出にブレーキは掛からず、それどころか加速してしまい、「東京一極集中」が一段と強まっている。

 結局、日本人は定住人口が減っていくという「不都合な真実」と向き合わざるを得ない。そういう意味では、観光やビジネス、国際会議などで日本を訪れる「交流人口」を増やそうという国・地方の方向性は正しいと思う。

 関係者の努力が実り、日本政府観光局(JNTO)によると2018年の訪日外国人数(暫定値)は6年連続で過去最高を更新、3119万人に達した。東京五輪・パラリンピックの開催を控え、「2020年に4000万人」という政府目標の達成も視野に入る。

 これに対し、訪日客が滞在中の買い物・飲食などで使う2018年のインバウンド消費額(確報値)は4兆5189億円にとどまり、一人当たりの消費額は15万3029円と前年から0.6%減少した。中国からの訪日客による爆買いブームが一服し、「2020年に8兆円」という政府目標の達成を危ぶむ声も出ている。

 また、訪日外国人数やインバウンド消費は、国際情勢に左右される側面も忘れてはならない。実際、2019年9月の訪日外国人数(推計値)は全体で5.2%増を記録したが、韓国からの訪日客に限ると日韓関係悪化を映して前年比58.1%減。韓国人旅行客に依存してきた観光地からは、悲鳴が上がっている。

社員「全国回遊」で「関係人口」を増やそう

 すなわち、インバウンド消費への過度な依存にはリスクがあるのだ。2020年夏以降、東京五輪・パラリンピックが閉幕した後の反動減も避けられまい。安倍政権もその点を懸念しているとみられ、定住人口、交流人口に次ぐ第三のカテゴリーとして「関係人口」を打ち出してきた。

 関係人口の定義は必ずしも明確ではないが、総務省は公式サイトで関係人口を「移住した『定住人口』でもなく、観光に来た『交流人口』でもない、地域と多様に関わる人々を指す言葉」と説明。その上で、「地域によっては若者を中心に、変化を生み出す人材が地域に入り始めており、『関係人口』と呼ばれる地域外の人材が地域づくりの担い手となることが期待される」としている。

 2019年6月、安倍政権は「まち・ひと・しごと創生基本方針2019」を閣議決定。この中で、2020年度にスタートする第2期総合戦略(2020~2024年度)において、「定住に至らないものの、特定の地域に継続的に多様な形で関わる『関係人口』の創出・拡大に取り組む」と明記した。

 具体的な施策案としては、①産業界における社員の副業解禁の流れを受け、地方で貢献したい東京圏などの人材と、外部人材を受け入れたい地方の中小企業をマッチング②東京圏の高校生が一定期間、地方の高校で過ごす仕組みの構築③地方の企業における、東京圏などの大学生のインターンシップ・プログラムの質向上④二地域居住の促進に向け、農地付き空き家などの情報提供を充実―などが盛り込まれている。

 いずれも重要な施策ですぐに実行してほしいが、未曽有(みぞう)の人口減少に立ち向かうにはパンチ力不足を否めない。そこで関係人口の拡大に向け、一つ提言をしておきたい。政府が産業界に全面的な協力を求め、1年のうち数カ月間、社員の職場を大都市圏から地方へ移したらどうか。

 例えば、大都市圏の社員が夏は寒冷地、冬は温暖地を職場にする。もちろん、企業の事業計画や社員のライフスタイルに応じて春や秋に地方で働いてもよい。いずれにしても社員は全国を「回遊」しながら、各地の人々と触れ合い、名所や特産品、農漁業体験やスポーツなどを楽しむのである。会議も大都市圏の本社ではなく地方で開けば、その参加者が落とすお金でも地域経済は潤う。

 「2時間の映画を3秒でダウンロード」という次世代通信規格5Gが今後本格的に普及すれば、ソフトウェア開発などでは大都市圏でなくても可能な仕事はもっと増えるだろう。地方では空き家・空きオフィスが激増しており、これをリノベーションすれば「回遊社員」の住居・職場としてよみがえる。社員の回遊に要する交通費や空き家のリノベーション費は、政府が企業に対して財政支援を講じてもよい。

 実は安倍政権は第1期総合戦略の中で、本社移転など企業の地方拠点強化について7500件という目標を掲げていた。だが政府の検証によると、実績は1690件と大幅に下回った。企業の地方拠点における雇用者数も4万人増の目標に対し、結果は1.6万人にとどまる。特段の必然性がなければ、企業にとって本社移転や地方雇用拡大は容易でないからだ。

 それよりも、社員に回遊してもらうほうがハードルはずっと低くなるはず。「働き方改革」の一環で在宅勤務の普及が加速しており、働く場所の選択肢に自宅やサテライトオフィスと並んで「地方」を追加すれば、関係人口は予想以上に増加する可能性があるのではないか。日本人の国内流動性を高め、行動範囲を拡大すれば、新たな付加価値が必ず生まれてくるはずだ。

20191106_01.png社員「回遊」で「関係人口」を増やす
(出所)新西 誠人

TAG:

※本記事・写真の無断複製・転載・引用を禁じます。
※本サイトに掲載された論文・コラムなどの記事の内容や意見は執筆者個人の見解であり、当研究所または(株)リコーの見解を示すものではありません。
※ご意見やご提案は、お問い合わせフォームからお願いいたします。

※この記事は、2019年9月30日発行のHeadLineに掲載されました。

戻る