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コロナ禍で「デジタル政府」が発揮した真価

=デンマーク・韓国・エストニアに学ぶ=

2021年01月18日

新型ウイルス

研究員
新西 誠人

 「(新型コロナウイルスへの対応をめぐり)デジタル化についてさまざまな課題が明らかになった」―。菅義偉首相は2020年9月、デジタル改革関係閣僚会議で危機感をあらわにした。国や自治体のデジタル化の遅れと人材不足、不十分なシステム連携に伴う行政の非効率などの課題を指摘。こうした問題意識から、デジタル庁の創設を打ち出した。IT(情報技術)を活用して行政サービスを効率化する、「デジタル政府」実現を改革の「一丁目一番地」と位置付ける。

 実際、日本政府のデジタル化は国際的に見て進んでいるとは言い難い。国連の経済社会局は2020年7月、193カ国を対象としたデジタル政府ランキングを発表した。各国のデジタル化の水準を、オンラインサービス指標、人的資本指標、通信インフラ指標から評価。その平均点でランキングしたものだ。この調査によると、日本は14位にとどまる。

デジタル政府ランキング

図表

(出所)国連を基に筆者

 ではランキングが高い国は、行政サービスの質や効率が日本より高いのだろうか。実は、コロナ禍への対応を比べると、その差が浮き彫りになる。本稿ではランキングの上位を占めるデンマーク、韓国、エストニアのデジタル化の現状を日本と比較する。

日本の給付金支給が遅れた理由

 まず、日本の対応を振り返っておこう。安倍晋三前政権は2020年4月、新型コロナウイルス感染症の緊急経済対策を閣議決定。その中に、住民基本台帳に記載された人への10万円(特別定額給付金)の一律給付を盛り込んだ。緊急事態宣言によって外出自粛を要請する上で、国民生活の下支えが急務だったからだ。ところが、「スピードが命」の施策にもかかわらず、給付に手間取った。

 政府は郵送とオンラインという、2種類の申請方法を用意した。常識的に考えればオンラインで受け付け、コンピューターで処理するほうが速そうだが、実態は違った。データの処理が自動化されておらず、姓名や銀行口座番号を1件1件、人が確認したり修正したりする必要があったからだ。日本テレビの報道によると、品川区(東京都)では郵送なら日に3000件処理できるのに対し、オンラインではわずか350件だったという。

 処理の煩雑さから、オンライン申請を止める自治体も相次いだ。朝日新聞によると、全国市区町村の98%に当たる約1700の自治体がそれを実施したものの、7月30日までに111の自治体が中止・停止したという。そこまでいかなくても、「オンラインより速く対応できる」として郵送方式を推奨した自治体は少なくない。

コロナ禍でも迅速に対応したデンマーク

 では、デジタル政府ランキングで1位になったデンマークの対応はどうだったのだろうか。

 同国は「親指姫」や「人魚姫」を生んだ童話作家のアンデルセンや、高級陶磁器のロイヤルコペンハーゲンなどで知られる。日本人にとっては「古典的なヨーロッパ」というイメージがあるが、実は北欧有数のIT先進国だ。

 その実力はコロナ禍の中でもいかんなく発揮された。デンマーク政府は、ロックダウン(都市封鎖)を翌日に控えた3月10日、解雇しないことを条件に従業員の給与の75%を国が負担すると発表した。ブリュッセルの独立系オンラインメディアのEUオブザーバーによると、この政策パッケージの策定に要したのはわずか24時間。給付希望者はオンラインで申請し、手続きは5~10分で完了した。1カ月後にはおカネが振り込まれたという。

 これだけ迅速に対応できたのは、コロナ禍の前からデンマーク政府のデジタル化が進んでいたからだ。

デンマークの基本情報

図表(注)フェロー諸島及びグリーンランドを除く
(出所)外務省、国際通貨基金(IMF)

 デンマークでは、子どもが生まれると2~3時間後には国民中央個人登録番号(CPR)が付与される。この番号は10桁からなり、最初の7桁が生年月日、次の3桁が固有の番号だ。最後の桁は男性が奇数、女性が偶数となる。

 デンマーク統計局によると、同国最初の国勢調査は1769年に行われた。以降、出生から結婚、葬式までを執り行う各地の教会が住民登録を担っていた。1924年からはその管理が自治体に移行。第一次世界大戦後に社会が混乱する中、食料などを配給制にするのが目的だった。当初は紙の台帳で管理していたが、1968年から電子化。当時は徴税の効率化が主目的だったという。

 このCPRは国民だけでなく、3カ月以上デンマークに滞在する外国人も取得しなければならない。それだけCPRが日常生活に深く根差しているのだ。例えば、図書館などの行政サービスを利用するだけでなく、銀行口座の開設や各種会員の登録、携帯電話の契約など、個人を特定する場面において頻繁にCPRの提示を求められる。CPRは身分証明書を兼ねた健康保険カードに印字され、担当医なども記載されている。

写真 健康保険カードの例
(出所)コペンハーゲン市

 デンマークでは、全国民がこのCPRと銀行口座を連携させなければならない。納税や還付金受け取りなどは、すべてこの口座を通して行うからだ。実は、コロナ対策の給付金を迅速に支給できたのも、この仕組みの存在が大きい。

 本人確認には、CPR とは別に電子署名「NemID」が用いられる。紙に印刷された一種のワンタイムパスワードで、4桁+5桁の番号からなる。政府のシステムにログインしようとすると、4桁の番号が表示される。同じ番号を紙から探し、続く5桁を入力することで認証が完了する。

 市民ポータルサイト「Borger.dk」にアクセスすれば、ワンストップで省庁や地方自治体にまたがる行政手続きを行える。現在2000種類ほどの手続きがオンラインで可能という。例えば引っ越しする際も、10分程度ですべての手続きが完了する。もちろん役所に出向く必要はない。このポータルには「過去3カ月の給与の確認や、税金に関するデータの検索、医療情報の確認、関連するドキュメントの印刷ができます」と記されている。

生産性向上が「至上命題」高福祉国家

 なぜこれほどまでにデンマークはデジタル化にこだわるのだろうか。理由の1つは、高福祉国家を維持するためだ。手厚い社会保障を提供するには、確実な徴税と公共機関の生産性向上が「車の両輪」となる。

 先述の通り、そもそもCPRは効率的な徴税を目的に始まった。このためデジタル化庁は、現在も財務省の傘下にある。職員はおよそ290人で、主に政府のデジタル化戦略を立案する機能を担う。

 実は、公共機関の生産性向上は1993年に発効した欧州連合(EU)のマーストリヒト条約で求められている。その批准をめぐり、デンマークの国民投票ではいったん反対が上回ったため、発効が大幅に遅れた。

 その条文には、「財政赤字をGDP比3%以下に抑えること」という項目がある。デンマークは高福祉国家で公務員が3割を占め、高齢化率も2割程度と高いため、生産性向上が常に至上命題となる。

 もっとも、今でこそ世界一のデジタル政府も、一足飛びに実現したわけではない。コペンハーゲン大学のイェンス・ホフ教授によると、1992年に財務省が多目的ICカードの導入を提案したものの、プライバシー問題の懸念から議会で頓挫した。

 この失敗を教訓に、政府は電子署名基盤としてNemIDの前身となる「DamID」を構築。これは公開鍵暗号を使い、セキュリティー対策を強化したものだ。しかし、電子署名データをハードディスクに入れる仕組みだったため、利用者がコンピューターを代えると使えなくなるという問題が生じた。現行のNemIDは先に紹介したようにワンタイムパスワードを導入したため、こうした不便を解消している。

 デンマークでも当初は日本と同様、省庁縦割りの弊害が電子政府化を阻んでいた。2000年頃から各省庁が独自のシステムをばらばらに構築したため、国民はそれぞれの行政サービスごとに煩雑な手続きを余儀なくされた。この問題を解消するため、2007年に導入されたのが先述の統一窓口「市民ポータル」だ。

 ちなみに、デンマークの地方自治体向けにITシステムを開発しているのは、1972年に各自治体のITセンターを統合したKMDだ。当初は自治体の協会が所有していたが、資金難から2009年に投資会社へ売却。2019年には日本のNECが買収している。

 政府のデジタル化が進むと、国民の利便性は向上する。その一方で、国家がすべての情報を握るとオーソン・ウェルズのSF小説「1984」のように、ディストピア的な世の中になるのではないかという疑念が生じる。

 デンマークは行政情報を幅広く公開することで、その払拭に努めてきた。また、行政がCPRなどの個人情報を使用するには制限があり、国民本人の同意が義務付けられる。透明性が高いためか、ある世論調査によると76%の国民が政府を信頼しているという。

 デジタル化を進める上で不可欠な情報弱者への支援も充実している。例えば、高齢者に対しては、デジタル行政サービスを利用するための無料講習会を全国的な高齢者組織とともに実施。デンマーク政府によると、15~89歳の94%がインターネットにアクセスできるという。

韓国はクレジットカード会社と連携

 ランキング2位の韓国では、コロナ禍に伴う給付金が2020年4月30日に国会で成立した予算案に盛り込まれた。その額は、単身世帯40万ウォン(1ウォン=0.09円換算で3万6000円)、2人世帯60万ウォン、3人世帯80万ウォン、4人以上の世帯100万ウォンである。

 5月11日から受け付けを開始。申請はクレジットカード会社や自治体のホームページから行う形だった。前者の場合は、必要な情報があらかじめ申請書に入力されており、わずか3~4クリックで1分もかからずに完了。申請後、2日以内にカード口座に相当額が振り込まれる。後者で申し込むと、地域で使える商品券などで受け取ることも可能。ただし、ネットが使えない人は地域の住民センターに出向く必要があった。

韓国の基本情報

図表(出所)外務省、IMF

 日本の自治体国際化協会のレポートなどによると、韓国のデジタル政府化への取り組みは1997年の経済危機から本格化した。金大中大統領(当時)は、行政改革の手段としてデジタル化を推進。情報通信産業を育成して経済を活性化し、国民の生活を立て直す狙いもあった。

 1999年には韓国情報通信部が「サイバーコリア21」を発表。21 世紀が知識社会に移行するという認識の下、情報通信インフラの構築や、その活用による生産性向上、新規産業・雇用の創出を掲げた。その結果、デジタル政府ランキングでは、2010年、2012年、2014年に1位を獲得。2016年と2018年は3位に後退したものの、2020年には2位となった。

 デジタル政府の基幹システムはどのような態勢で開発されているのだろうか。日本の内閣官房のレポートによると、中央政府向けと地方自治体向けで担当組織が異なるという。前者を担う情報社会振興院の職員は350人。ほとんどが民間出身で、9割が博士号を持つ。

 後者については、地域情報開発院が担当。このため各自治体ごとにシステム開発予算を組む必要がない。運用や管理、改修も開発院傘下の行政情報共同利用センターが行うため、自治体の負担も軽いという。

 こうした政策はIT産業の育成も兼ねる。このため、例えばシステムの設計と実装は別々の業者に発注する。こうすることでベンダー(業者)の固定化が起きにくくなるという。しかも、大手ITベンダーは参入できない仕組みにし、新興企業を優先的に育成する。

 日本のマイナンバーカードに相当する「住民登録証」は、1968年スタートで歴史が長い。当初は、北朝鮮のスパイをあぶりだすのが目的だったとされる。このため、韓国では18歳以上の国民にこのカードの携行が義務付けられる。

写真住民登録証の例
(出所)韓国行政安全部

 住民登録証の番号は13桁。生年月日や性別、出生自治体番号、通し番号、確認番号が並ぶ。全国民が持つ個別番号であるため、日常生活に浸透する。病院や学校での手続きのほか、銀行口座の開設や携帯電話の契約など民間でも幅広く利用されている。

ロシアの脅威からデジタル化を進めたエストニア

 ランキング3位はバルト海に臨むエストニア。日本では、元大相撲大関の把瑠都が国会議員を務める国というイメージが強いが、世界的にはインターネット上の通話システム「Skype」が生まれた地として知られる。九州と同じぐらいの国土に住んでいるのは、さいたま市と同程度の132万人。人口密度が低く、均一な行政サービスの提供が難しいという事情が、官民のIT化を後押しした。

エストニアの基本情報

図表

(出所)外務省、IMF

 NHKの報道によると、エストニアでは2020年2月27日、海外からの帰国者で初のコロナ感染が確認された。3月12日には在住者でも感染が確認されたため、翌日にロックダウンが始まった。とはいえ、IT化が進んでいたため、行政はほぼ通常通り機能し続けたという。

 政府は収入が3割以上減った人に限り、給付金を支給。全国民に一律ではないため、資格の確認など複雑な処理が必要になる。しかし、申請開始後わずか2週間で給付が完了したという。世界有数のデジタル政府が真価を発揮した形だ。

 エストニアの行政サービスは選挙から、納税、住民登録、会社登記、医療、教育、警察に至るまでほとんどがオンラインで完結する。2005年には地方議会議員選挙で世界初の電子投票が実施され、納税や処方箋の99%がオンラインで処理される。オンラインで行えない行政サービスは、①結婚②離婚③不動産売買―の3つだけだという。

 エストニアのデジタル政府の柱となるのは、2001年に運用が始まった「X-Road」という情報連携基盤である。国や自治体、民間の電子サービスを連携させるシステムだ。ある行政手続きを行う際、必要な情報が複数の省庁や自治体にまたがることは多い。X-Roadはこうしたケースでも、組織の垣根を越えてそれぞれのデータベースから必要な情報を引き出し、一括処理する。

 このシステムの特徴は、自治体がそれぞれの人口・需要に合わせてシステムを構築しても、情報の連携を図れることだ。しかも、エストニアはX-Roadをオープンソースソフトウエアとして公開しており、同国対岸のフィンランドや中央アジアのアゼルバイジャンなども採用する。日本でも市川市(千葉県)が2019年5月に導入を決めた。

 こうした情報連携の仕組みはコロナ禍において、病院でも活躍した。電子カルテや電子処方箋のおかげで、医師や看護師の仕事が円滑に進んだと伝えられる。

 エストニア政府が採用する本人確認システムは、民間に開放している点が特徴だ。例えば、ネット銀行などが政府の認証サービスを利用することも可能。その分、ソフトウエア開発が不要になるため、民間はコストを削減できる。

 エストニアでは15歳になると、「e-ID」と呼ばれる国民カードを取得する義務が生じる。これは、運転免許証やEU内のパスポート、健康保険証として機能する。

写真e-IDカードの例
(出所)エストニア警察・国境警備庁

 なぜエストニアはデジタル政府の推進に熱心なのか。背景には、安全保障上の問題がある。1991年に旧ソ連から独立したものの、依然として国境を接するロシアの脅威からは逃れられない。仮に政府機関が破壊されたとしても、データさえ保存しておけば国の再建は可能と考えるのだ。このため、データのバックアップは他国にも残している。

 また、プライバシーの問題はどう対処しているのだろうか。この点については、自分の個人情報をだれが見たかをログ(履歴)に残すことで解決する。政府職員が情報を見た場合も、そのログがすべて残る。さらに、閲覧資格のない人が情報にアクセスすると、アラートが発せられる。

 日本でもマイナポータルを通じて、行政機関同士でマイナンバー制度に関わる情報照会・情報提供を行う場合、国民はその記録を閲覧できる。ただし、事務担当者の氏名までは開示されない。

コロナ接触確認アプリにも違いが...

 次に、新型コロナウイルスの感染が拡大する中、日本とランキング上位3カ国が導入した接触確認アプリについて比較する。その仕組みには、個人情報取り扱いに対する国の姿勢の違いが顕著に表れている。

 日本では、厚生労働省が2020年6月19日、接触確認アプリCOCOA(ココア)をリリースした。スマートフォンにインストールしておくと、新型コロナウイルスに感染した人との接触情報を知らせてくれる仕組みだ。

 厚労省によると、接触確認アプリには大きく分けて、①スマホの「位置情報」を当局が特定するもの②Bluetoothを使い、「接触」を当局が特定するもの③Bluetoothを使うが、「接触」を当局が把握しないもの―の3つの方式があるという。

 プライバシーへの影響は③が最も小さく、日本やデンマーク(smitte|stop)、エストニア(HOIA)が採用する。これに対し、韓国は①を導入し、当局が厳しく監視する。

 日本では、アプリのインストールは国民の裁量に任される。厚労省によると、2020年12月14日時点で2168万件がダウンロード済み。約8509万人と推計されるスマホユーザーのうち、インストール率は25%。総人口比では17%にとどまる。

 果たして「17%」は意味のある数字なのか。これに関して、安倍首相(当時)が2020年5月の記者会見で、「アプリが人口の6割近くに普及し、濃厚接触者の早期の隔離につなげることができれば、ロックダウンを避けることが可能となる大きな効果が期待できるという研究がある」と発言した。このため、インストール率が6割以下では効果が薄いという見方が広がった。

 しかし、この研究を推進した英オックスフォード大学のクリストフ・フレーザー教授は「それは誤解だ」と語っている。そのシミュレーションでは、総人口に対するアプリのインストール率が14%だとしても、使わないよりは効果があることが示されている。

 とはいえ、インストール率が高いに越したことはない。オックスフォード大学のヨハネス・アベラー教授らは、3~4月に英国や米国、フランス、ドイツ、イタリアを対象に接触確認アプリをインストールするか否か調査した。有効回答約6000人のうち、約75%の人が「インストールする」と回答したという。そして政府を信頼している人は政府を信頼していない人よりも、アプリをインストールする可能性が約26%ポイント高くなるという結果が出ている。

 一方、韓国では感染が確認されると、スマホの位置情報やクレジットカードの利用履歴、医薬品の購入情報、監視カメラ映像を基に、国民の行動がキメ細かく追跡される。

 この感染者情報を、韓国の疾病管理本部がリアルタイムで発表する。それを使い、感染者の移動ルートや隔離場所を地図上に表示する非公式サイトも現れた。「coronamap.site」は、韓国で初めて感染者が確認された2020年1月20日のわずか10日後に登場。作ったのはソウルの大学に通う学生だ。

 これ以外にも、感染情報と自らの行動を照らし合わせて感染リスクを警告するものなど、同様のサイトやスマホアプリがいくつも作られている。制作者の多くは大学生であり、デジタル人材の層の厚さを感じさせる。

写真感染者情報を表示するコロナマップ
(出所)coronamap.site

 感染した場合、スマホへの「感染追跡アプリ」のインストールが義務付けられる。これは感染者が決められた期間、ホテルや自宅などの隔離場所を離れていないかを確認し、体温や体調を報告させるためだ。違反すると、1年以下の懲役または1000万ウォン(90万円)以下の罰金が科せられる。

 韓国政府が個人情報把握も含む厳しい姿勢で臨むのは、2015年に中東呼吸器症候群(MERS)の流行を経験したからだ。高い致死率を教訓に、防疫を徹底するための感染者追跡システムが整備された。

日本が学ぶべき3つのポイント

 ランキング上位3カ国に共通するのは、いずれもコロナ禍に迅速に対応できたという事実だ。対照的に、日本政府はデジタル後進国ぶりを露呈した。菅義偉政権は2021年9月のデジタル庁創設を表明したが、3カ国から良い点を学ぶべきではないだろうか。具体的には、①統一的なシステム②日常生活にも活用される国民登録番号とカード③銀行口座との連携―になる。

 ①については、デンマークは政府ポータルサイトを設け、国民がワンストップでアクセス可能な窓口を創設。韓国は中央省庁が地方自治体のシステムも請け負い、エストニアも省庁の垣根を越えてデータを利用可能な仕組みを整備している。

 中でも参考になるのはエストニアだ。日本では縦割り行政が非効率を生んできたからだ。その点、平井卓也デジタル改革相は日本・エストニア友好議連の会長を務める。各省庁や全国約1700に上る自治体がシステムを連携するに当たり、エストニアの知見を是非活かしてほしい。

 ②の国民登録番号は、3カ国とも生年月日などを組み合わせた番号だ。日本のマイナンバーはランダムで、原則として他人に教えてはいけない。3カ国の事例を見ると、こうした仕組みが、日本での普及を妨げている可能性もあり、見直す余地も指摘できそうだ。

 また、3カ国では登録番号やそれを記載したカードが、行政サービスだけでなく銀行口座の開設や携帯電話の契約などにも使われ、日常生活のインフラとなる。

 一方、菅政権もマイナンバーカードと運転免許証の一体化を2024年度末までに実現する方針を表明した。すべての国民がカードを持つようになれば、それを活用した新たな民間サービスの出現も期待される。ただしその場合、安心してカードが利用できるよう、セキュリティー対策を万全にする必要がある。

 ③では、銀行口座との連携が3カ国の新型コロナ給付金にスピード感をもたらした。菅政権もマイナンバーの銀行口座とのひも付け義務化を検討しているが、プライバシー保護の観点から反対の声も大きい。

 国民の理解を得るには、政府に安心して情報を預けられる信頼の醸成が不可欠になる。国民への詳しい説明はもちろん、透明性の確保もカギを握る。エストニアのように政府が国民の個人情報にアクセスした際に、本人がその詳細を知ることができる仕組みも検討すべきだろう。

 コロナ禍によって、日本政府のデジタル化の遅れが白日の下にさらされた。ただし、財政難や人口減少で行政の生産性向上が求められて久しく、巨大災害への備えも迫られる日本では、コロナ禍が起こらなくてもいずれ対応を迫られていたはずだ。これをきっかけに海外の先進事例を学び、日本がデジタル政府分野でも先進国の仲間入りを果たす機会としたい。

写真アンデルセン童話を生んだコペンハーゲンの運河
(写真)田中 博

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※この記事は、2021年1月5日発行のHeadLineに掲載されました。

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