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「トライアルステイ」が地方創生のヒントに

=三浦市(神奈川県)の移住・2地域居住政策=

2020年04月14日

新型ウイルス

企画室
岩下 祐子

 新型コロナウイルスが地球に襲いかかり、日本にも深刻な影響を及ぼし始めた。人口減少が本格化する中、近年の地方経済は海外からの旅行客がもたらすインバウンド消費によって、一息ついていた。ところが、それはウイルス感染拡大とともに激減。2020年2月の訪日客数は前年同月比58.3%減の108.5万人、中国からに限れば87.9%減の8.7万人まで落ち込んだ(日本政府観光局)。観光・宿泊をはじめ関連産業は存続の危機に陥り、インバウンド頼みの地方創生は抜本的な見直しを迫られる。それを考える上で1つのヒントになりそうな、自治体の取り組みを紹介したい。

 先日、何気なくみていたテレビの情報番組で、「子育て中のAさん一家は神奈川県三浦市でトライアルステイを行いました」と紹介していた。トライアルステイ?別荘とは違うの?空き家に宿泊?頭の中にいくつもの疑問が浮かび、その正体を知りたくなった。

図表

 早速、三浦市のホームページで調べてみた。それによると、トライアルステイ=お試し居住。「空き家等を活用して短期間のお試し居住を体験していただくことにより『移住のきっかけづくり』を行うプログラム」という説明があった。過去4年間で235世帯が応募、88世帯が参加したという。観光では知り得ない街の魅力を体験してもらいながら、移住あるいは2地域居住(=セカンドハウス)で三浦市を選ぶ人を増やそうという政策のようだ。

 テレビ番組が紹介したAさん一家は、都心のマンションに在住。幼い子ども2人を自然豊かな環境で育てたいと考え、2地域居住を検討していた。そんな時、三浦市のトライアルステイを知り、一家で体験してみた。すると、インターネットで調べてもよく分からない、「公園の利用しやすさ」といった街の素顔に触れることができたという。また、京浜急行電鉄の快速特急を利用すると、三浦海岸駅から東京・品川駅まで1時間強で行ける。週明けに都心の勤務先へ通うことも十分可能だ。Aさんはほかの街も検討したが、結局、三浦市内の海が見える空き家を購入したという。

写真海水浴やマリンスポーツが楽しめる三浦海岸
(写真)筆者

 2019年度の場合、三浦市は5期に分けてトライアルステイを実施。滞在期間は約3週間~約1カ月。参加者の負担する費用は、事務手数料(3万円あるいは4万円)や参加保証料(2万円、退去時に返金)、火災保険料などである。期間中、市は参加者を対象にバスで巡る市内ツアーや、地元住民・移住者との交流会を開催。また、移住者がトライアルステイの楽しみ方を解説するセミナーを都内で開催するなど、実に熱心に取り組んでいる。

 一体なぜ三浦市は、トライアルステイに力を入れるのか。「三崎マグロ」で有名なように、この街は漁業・農業が盛んだ。首都圏への食料供給地として重要な役割を担うが、近年は京浜地区への若年層の流出が著しい。1995年に5.4万人を超えていた人口は4.2万人まで減り、神奈川県内の市では唯一の消滅可能性都市とされる(日本創成会議)。人口減少に伴って空き家も増え続け、2013年の空き家率は17.4%と県内の市では最も高い(全国平均は13.6%)。

図表三浦市の人口推移と予測
(出所)2015年までは国勢調査、2020年以降は国立社会保障・人口問題研究所の推計

 人口減少と空き家率上昇を背景に、三浦市はトライアルステイに着目して、移住者・2地域居住者を1人でも増やそうと奮闘しているのだ。インターネットで検索すると、箱根町(神奈川県)や天川村など3村(奈良県)、福井市(福井県)などの自治体も同様の取り組みを実施しているようだ。

 今後、日本の出生率が劇的に改善する可能性は、残念ながら非常に低いと言わざるを得ない。このため、各自治体が定住人口を増やそうと躍起になっても、全国的にみればゼロサムである。つまりA市が1人増えれば、B市は1人減るというわけだ。そういう意味では、トライアルステイによって都市住民に地方への関心を高めてもらい、2地域居住者を増やす政策は理にかなうと思う。現下のコロナショックを乗り越えた後、三浦市の地道な努力が実るよう期待したい。

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