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社会的課題の解決

第20回 深層

2021年04月01日

所長の眼

所長
神津 多可思

 1年半前には予想もしなかった今回のコロナ禍。その下でさまざまな社会的課題が浮き彫りになっている。振り返ると、大きなショックはいつも社会の根本的な課題を浮き上がらせてきた。1990年代のバブル崩壊、2000年代の世界金融危機、2010年代の東日本大震災、そして2020年代に入ってからのコロナ禍。いずれも既に顕在化しつつあったが、解決が難しい社会的課題を改めて浮き彫りにしてきた。

 バブルの崩壊は、先進国に追いつくために効率化された金融経済の構造を、米欧と同じ土俵での競争の中で生き残れるよう変えなくてはいけない現実を明らかにした。世界金融危機では、急速に統合された国際金融市場の動きが、時として実体経済から大きく遊離し、それが経済に大きなダメージを与えることが分かった。

 東日本大震災では、自然災害の多い日本で、安心安全な生活を続けていくためのインフラ整備のあり方が改めて問われた。そして今回のコロナ禍では、デジタル化の遅れや、危機対応のための社会的意思決定の遅さに気づかされたことは言うまでもない。

 加えて、こうした30年余に及ぶ期間の出来事を通じて、日本でもさまざまな格差が拡大する方向にあり、それが社会分断的に作用しがちなことは、欧米とも共通する。さらに日本では、先進国の中で最も速く高齢化が進んでおり、それに伴う課題もたくさんある。

 このように簡単には解決できない社会的課題が山積する中で、変わることができない日本に対する否定的な論調も目立つ。しかし、日本は世界的にみて失敗国なのかと言えば、決してそうではない。

 75年余の間、戦火にまみえることは一度もなく、文字通りいったん灰燼(かいじん)に帰した経済は、中国に追い抜かれたとはいえ、規模ではなお世界第3位である。一人当たりの名目GDPをみても、日本はその躍進著しい中国の約4倍あり、世界の中では恵まれた部類に属する。確かに目の前には数々の難問が並んでいるが、それらへの取り組みはこのように恵まれた出発点から始めれば良いのである。

 とは言え、これまでと同じ認識、やり方ではうまくいかないことも明らかだ。単純に先輩の背中に学んでやっていけば良い時代では決してない。過去の知恵を、新しい時代の中で解釈し直した上で前に進む必要がある。そのためには、先輩世代においては、これまでとは違う発想や新しい行動パターンについて、自分の時代と違うからという理由で否定しない思考の謙虚さが求められる。同時に後輩世代には、今、何故そうなっているかを理解した上で、どうしてこれからは違うようにしなければいけないのかを明らかにする思考の奥行きが必要だ。

 年齢がさまざまなメンバーで構成される組織が、これからの大きな変化を乗り切るためには、そうした謙虚さと奥行きのある思考の下でのコミュニケーションが重要になる。またこれからは、組織ではなく、個として社会的課題に挑戦していくための仕組みもますます充実していくだろう。それでも、社会的課題の解決を目指す以上、さまざまなステークホールダーの間での相互理解なしには前に進めない。

 今、わたしたちがみている困難な社会的課題の解決には、全世代の総力が必要だ。それぞれの立ち位置で、それぞれの持ち場で、周囲の多様性を自覚しながら、臆することなく前に進んで行きたい。今日の世界を見渡した時、日本の社会にさらに前進するための条件が不足しているとは、到底言えないのだから。

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※この記事は、2021年3月31日発行のHeadLineに掲載されました。

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