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バイデン氏、地球温暖化対策に2兆ドル投資

=米大統領選で環境保護派を取り込む政策目標=

2020年08月05日

地球環境

研究員
野﨑 佳宏

 2020年11月3日の米大統領選まで3カ月余。新型コロナウイルスの感染者数が世界最多となり、再選を目指す共和党のトランプ大統領はその対応に追われる。これに対し、政権奪還を目指す野党・民主党の候補指名を固めたバイデン前副大統領は先に、地球温暖化に関する野心的な政策目標を発表。環境保護派や労働組合を確実に取り込むことで支持層の拡大を狙うようだ。

 まず、バイデン氏が2020年7月14日に発表した地球温暖化に関する政策目標の概要を紹介する。同氏は当選した場合、大統領就任から4年間に2兆ドル(約210兆円)を投資すると表明。具体的には、まず老朽化した道路や橋、緑地、水道、送電網、ブロードバンド回線について、持続可能な成長を実現するために新たなインフラを構築。また、清潔な空気と水へのアクセスを含め、公衆衛生の改善を公約する。

 米国経済の柱である自動車産業については、関連業種も含めて100万人の新規雇用を創出。電気自動車(EV)の充電ステーション50万カ所設置などにより、「自動車労働者とメーカーが21世紀に勝利を収めるよう位置付ける」と強調している。

 人口10万人以上の全米都市においては、二酸化炭素(CO2)を排出しないゼロエミッション公共交通機関の選択肢を提供。LRT(次世代型路面電車)路線網の整備のほか、バス路線など既存交通機関の改善や歩行者・自転車向けのインフラ整備に取り組む。

 電力セクターでは、2035年までに炭素汚染を発生させないようにする。それによって現存する気候変動の脅威に対応するほか、数百万もの雇用を創出する。

 建造物に関しては、最初の4年間で商業ビル400万棟を改修し、住宅200万戸の断熱化を実施。それにより、給料の高い雇用を少なくとも100万創出する。また、(地球温暖化対策の観点から)持続可能な住宅を150万戸建設する。

 重要なクリーンエネルギー技術においては、蓄電池やCO2の吸収・利用、次世代の建設資材、生産プロセスで炭素を発生させない水素、改良型原子炉などについて劇的なコスト削減を推進。早期に商用化を図り、こうした先端技術の「メイド・イン・アメリカ」を保証する。

 このように、バイデン氏は各分野に先端技術を導入して地球温暖化対策に取り組む「本気」を示した。一方で、それと同時に雇用も拡大する姿勢をアピールしている。雇用創出に当たっては「労働組合に加入する選択肢」を随所に盛り込み、民主党の支持基盤である労働組合への配慮が目立つ。

 バイデン氏は「気候変動対策に残された時間は20年も30年もあるわけではなく、科学に基づけば残り9年しかない。就任後の4年で気候変動に対応する」と力強く語る。また、米紙ワシントン・ポストは上述した政策目標のうち、電力セクターの2035年脱炭素化に着目。「バイデン氏は10年前にオバマ大統領が電力部門からの排出量抑制のために採用しようとしたキャップ・アンド・トレードを上回る、直接的な政策アプローチを進めようとしている。」と評価する。

 キャップ・アンド・トレードとはCO2排出量取引の一種。事業者ごとに排出量の上限(=キャップ)を設け、それを上回る分(=余剰排出量)や下回る分(=不足排出量)を売買する仕組みである。オバマ政権はこの政策の導入でCO2排出量の大幅な抑制を目指したが、連邦議会の共和党に阻まれて挫折した。ワシントン・ポストによると、当時副大統領だったバイデン氏はその教訓を活かし、電力会社に炭素を含まない供給源(=風力や太陽光、原子力、水力発電など)から電気をつくるよう求め、改善しない場合にはペナルティを課すことも検討しているという。

 対照的に、トランプ大統領は化⽯燃料の強⼒な⽀持者であり、気候変動がもたらす地球温暖化に懐疑的な姿勢を崩さない。異常気象や自然災害が世界各地で頻発する中でも、地球温暖化対策の国際ルール「パリ協定」からの離脱を2017年に表明。2019年11月、米国はパリ協定からの離脱文書を国連に正式に提出し、今回の大統領選の翌日(=2020年11月4日)付の離脱が決定した。

 トランプ氏は「一方的でカネがかかり、恐ろしいパリ協定からの離脱を発表した」と支持者にアピール。ポンペオ国務長官も「パリ協定の下では米国の労働者や企業、納税者に不公平な重荷が課される」と離脱理由を説明する。これに対し、バイデン氏はパリ協定への復帰を打ち出し、環境対策に熱心な左派層の取り込みに力を入れる。

 米国は中国に次いで世界第2位のCO2排出大国。バイデン氏が当選した場合、米国の地球温暖化対策は180度転換する可能性があり、世界に及ぼす影響は決して小さくない。

 バイデン氏が今回発表した政策目標は、地球温暖化対策で先行する欧州連合(EU)を意識したものといえそうだ。EUの行政機能を担う欧州委員会の委員長に就任したフォン・デア・ライエン氏は2019年12月、向こう5年間にわたり取り組む優先政策として「欧州グリーンディール」を挙げた。EU加盟国に対し、2050年までに地球温暖化ガス排出量を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」の達成を義務づけ、抜本的な社会変革を大胆かつ着実に進めていく行動計画を取りまとめたものである。

 その後、想定外の新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、「グリーンディール」はコロナショックからの経済復興という「グリーンリカバリー」の意味合いも持つようになった。経済と環境の連携である。欧州委が先に創設を決定した復興基金(Next Generation EU)も、それに必要な財源の一部になる。バイデン氏は今回の政策標の中で新型コロナウイルスには直接言及していない。しかし当選した場合には、欧州のグリーンリカバリーを参考に経済復興と地球温暖化対策をリンクさせる可能性もありそうだ。

 もしバイデン政権が誕生した場合、2021年に改定が予定される日本の「エネルギー基本計画」にも影響を及ぼすかもしれない。

 日本は、CO2排出量が多い石炭火力発電の稼働・新設・輸出について国際的な批判を浴びてきた。それに抗しきれず、梶山弘志経済産業相は2020年7月3日、「非効率な石炭火力をフェードアウトする仕組みを導入する」と表明。旧式石炭火力発電の稼働を抑制するため、有識者会議を設けて具体的な検討に着手する。その検討結果はエネルギー基本計画の電源構成に反映される。

 仮に有識者会議が石炭火力発電の削減を打ち出した場合、再生可能エネルギーや原子力発電などを含めた電源構成の見直しは必至。それは、エネルギー基本計画を考慮した上で改定される「地球温暖化対策計画」にも大きな影響を及ぼす。

 欧州と比較すると、米国や日本の地球温暖化対策の取り組みは停滞していた。ところが、米国でバイデン氏が大統領に就任した場合、日本が取り残される可能性が出てきた。このため、政府は米大統領選を注視しその結果を踏まえながら、エネルギー基本計画や地球温暖化計画の改定に取り組む公算が大きい。

写真地球を守りたい(米フロリダ州ハチンソン島の野生イルカ)
(写真)中野 哲也

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