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社会貢献活動ブログ

デジタル技術を活用した社会貢献プログラムに関する有識者ダイアログ開催

2022年5月17日

リコーは社会貢献活動の重点分野の一つに「はたらく人のインクルージョン」を掲げ、働くことに困難を抱える人を支援しています。2020年度からはインド農村部在住の女性アーティストを支援する「インド農村部アーティスト支援プログラム」、2021年度からはリコーグループのリソースを活用して若者を支援する「若者向けデジタル支援プログラム」を実施してきました。

今回の有識者ダイアログでは、3名の有識者をお迎えし、デジタル技術を活用した国内外のインクルージョンプログラムの今後の方向性に向けてご意見を伺いました。

ご参加頂いた有識者

認定特定非営利活動法人 育て上げネット 理事長  工藤 啓様

東大先端科学技術研究センター 教授        近藤 武夫様

re:terra 代表取締役社長              渡邉 さやか様

ディスカッション内容

(リコー):自己紹介及び、それぞれのお立場から見た若者が抱える課題や現状をお伺いしたい。

(近藤氏):インクルーシブな教育や雇用に関わる活動をしている。実施しているプロジェクトの一つに、障がいのある子どもたち・若者たちの中から将来の日本のリーダーを育てるDO-IT-Japanがある。この活動では、産学連携でテクノロジーを活用して周囲の環境を変え、小学生から大学生、そしてキャリアへの移行をサポートしている。

また、別の活動として、自治体や企業と連携して「超短時間雇用モデル」という、障がいや疾患のある人などが1日15分、週1回からでも働くことができる雇用モデルを作り、障害者雇用率制度にとらわれず社内に多様な人々が働くことができる職場環境や、それを支える地域制度づくりを行っている。

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近藤氏(右)


(工藤氏):育て上げネットでは、2004年から若者の就労支援をしており、年間で2,000名ほどの若者が相談に来る。

日本は、若者に対する幻想を持った社会だと思っており(若いから頑張れる、働けないのは自己責任等)、政府が若者の課題に取り組み始めたのは2003年でまだまだ最近のこと。一緒に支援プログラムを実施したいとお声かけ頂く企業は、外資系企業がほとんどで、日本の企業からのお声かけは少ないため、今後若者支援に取り組む日本企業がもっと増えることを期待している。

また、社会的排除という文脈では、例えば10年ひきこもっている若者は、社会の側から見えづらく、排除されてしまっている。彼ら・彼女らを働く側面からもインクルージョンすることは大きなチャレンジだと思っている。

雇われることを前提とした就職支援は、様々な可能性や才能を持っている若者の選択肢を狭めてしまっている。働き方が多様化していると言われながらも、まだまだやれることがたくさんある状況。今後企業のプロボノの皆さんの中に、副業でYouTuberをやっていたり、ビジネスを立ち上げたりしているなど、様々な働き方をしている社員の方にプログラムに参加して頂けるとありがたい。


(渡邊氏):活動としては、日本国内ではこの4月から長野県立大学大学院での専任講師の他、東日本大震災後から椿油の化粧品を作る活動をしている。国外では、2014年にアジア女性社会起業家ネットワークを立ち上げる活動の他に、SDGsビジネスのコンサルティングを行っている。

またITに関する就労支援としては、パレスチナ難民を日本の企業と繋ぐ就労支援や、ルワンダ在住の若者や障がい者にITを教える活動もしている。課題としては、若者はマーケットで今何が一番求められているのか、何を学べば自分の価値が上がるのかが分かってない状況なので、支援が難しいと感じている。

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渡邉氏(左)、工藤氏(右)


(リコー):日本国内における若者の課題、どのような支援を必要としているのか、考えられる将来の課題をお伺いしたい。


(近藤氏):米国では大学内の障がい者の割合が約19%だが、日本では約1%2016年から障害者差別解消法が施行され、大学でも合理的配慮を提供されるようになったので比率はこれでも増えてきてはいるが、まだまだ低い状況。テクノロジーを上手に活用すれば、障がいがあっても通常の学級で授業を受けることは可能。昨年からGIGAスクール構想で、一人一台ずつ端末が配布され、テクノロジー活用への期待は高まっている。例えば紙の教科書をデジタル化したことで、内容を読み上げてくれる機能により、学習障害や視覚障がいのある生徒も内容を読むことができるようになるなど、個別に最適化された学び方ができる。日本では小学校や大学での支援は整ってきているが、中高の支援が充分ではなくサポートが必要だと認識している。

(工藤氏):明日にでも就職しないといけない人たちとある程度生活基盤が整っている人たちでは見ている未来感が違い、抱えている課題も異なる。すぐにでも就職をしないといけない人たちに、働くことの多様な選択肢を提示することは、余裕と時間の面から難しく課題を感じている。また、毎年若者が減ってきている中で、若者に選ばれない企業、企業に選ばれない若者双方から相談があり、どちらもが取り残される状況が今後加速していくのではないかと考えている。どうしたら両者をいい形でつなげられるのかを考えていくことが重要。


(渡邊氏):近藤氏に質問。子どもが何をしたいか、何に向いているのかを誰がどのように判断するのか?雇う側をどのように変化させていくのか?

(近藤氏):「超短時間雇用モデル」では、一社にフルタイムで就職することだけが雇用であるとは考えない。ジェネラリストを雇用してどんな業務でもやってもらうのではなく、詳細な職務内容や必要な時間数などをあらかじめ明確に定義しておく。その職務さえ遂行できれば他の能力は問わず、障害や病気、子育てなどでこれまで働く機会を得ることが難しかったワーカーを採用し、超短時間で職務に従事してもらう雇用モデル。企業を変えるために、「障がい者を雇用するためには特別な仕事を作る必要があるのではないか」という思い込みを一旦忘れてもらい、特定の部署や社員単位で困っていることや手をつけられていないことを洗い出すことで、必要となる職務の定義をはっきりさせる。やってきたワーカーは「障がい者」ではなく「私たちの職場を助けてくれる人材」に変わる。なんでもできることが前提で、そうでない人が障がい者となってしまう職場を作るのではなく、求められる力がはっきりした働き方の選択肢を職場に作ることで、人々の能力観を変えていく。若者のインターンシップや子どもたちの職業体験でも、こうした選択肢を作ることが必要。



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(リコー):海外、特に東南アジアにおいての若者の課題、どのような支援を必要としているのか、考えられる将来の課題をお伺いしたい。


(渡邊氏):デジタルを活用して支援をしている事例として、REACHというベトナムのNGOの取り組みをご紹介する。REACHはアジアでの成功モデルと言われており、特徴的なのは無償でスキルトレーニングだけではなく、はたらくことや自分の強みを見つけるようなトレーニングも一緒に提供している点。選考プロセスは非常に厳しく、面談のみでなく場合によっては家庭訪問も行い時間をかけて選考している。プログラム修了後、就労した若者の8割は10年後も就労しているという結果がでており、大学を卒業した子たちと同水準の所得を得ているので、取り組みの参考になるかもしれない。

また、企業からアジアの女性起業家と何か一緒にしたいと言われることが多いが、アジア側も何をしていいのか、どうしたらデジタルを生かせるか分からない、企業側が何を持っているのかわからないため、繋ぐのが難しい状況。お互いを理解しながら、活用できる点を見つけてマッチングさせるニーズは感じている。

マーケットといかに繋がる就労支援をしてあげるか、いかに自分自身のことや、働くということを知ってもらうかが必要。海外も国内も若者支援に対し、やるべきことは同じだという認識だが、日本より海外の方が若者を支援対象として認識しているように感じる。

(リコー):地域の中小企業のお客様とインクルージョン活動を一緒に行っていく環境が整備され、うまく回っていくと、社会貢献にも地域貢献にもビジネスにもなる可能性があるのではないか。一社単独のプログラムで終わるのではなく、その先につながる社会全体の仕組みに広げていけると価値が高まる可能性がある領域だと感じる。日本で、若者×デジタルの熱が高まるようにリコーが自治体などのステークホルダーを巻き込みながら取り組んでいけたらよい。

(リコー):これまでお伺いした課題に対して、企業として彼らをどう支援できると思われるか。特にリコーのリソースを活用した支援はどのようなものが考えられるか。

(近藤氏):企業の中にいるとサービスを提供するベンダーとお客様という構造になりがちたが、その前に誰もが職業人で、そしてその前に地域社会の市民の一人であり、その前に家族の一人でもあることを忘れがちだと思っている。企業の社員の皆さんにも例えばお子さんが障がい児だったり、病気を抱えていたりと、同じ課題を抱えている方々がいらして、実はそれぞれの人たちが地域社会と繋がっていることがある。リソースグループのような形で同じ課題を抱えた社員が集まって、お互いの強みを活かし、地域連携のプロジェクト化していくのはどうか。

「超短時間雇用モデル」では部署の困りごとをはっきりさせて、そこが得意な人にやってもらうという仕組みになっている。リコーの社員が持つ強みを生かしながら市民社会と関わっていく仕組みの構築はどうか。企業内だけで取り組むのではなく地域のつながりがないと、うまくいかないと思っている。

(工藤氏):若者に直接考えを聞いてみるのはどうか。今の20代の若者から見たリコーはコピー機のメーカーとしてのリコーとみていない可能性があり、違う世界を見ているはず。彼らに直接聞くことで、こんなことをやってほしいなどアイデアが出てくると思う。あとは、先ほど話した通り若者を支える国内企業が少ないので、今後も支援をお願いしたい。


(渡邊氏):海外の視点からお話すると、NGOはマーケットのことをあまり知らないため、企業からのインプットを求めている。起業家はデジタルを活用したくても何をどのように活用すればよいか分からない状況。よって、企業側からNGOや起業家の方々と一緒にやりたいことを広い領域で検討して提示するのがよいのではないか。

(リコー)最後にそれぞれ一言お願いしたい

(近藤氏):DO-IT-Japanでは産学連携プロジェクトであり、企業の方には長年に渡り共催企業として企画運営に参加して頂いている。長い付き合いなので、社員に子どもたち一人一人の顏を分かって頂いていている。一人一人の成長や、お互いの顏が見える形で今後お付き合いしていけたら嬉しい。


(工藤氏):本日お伝えしていなかったことで一言。若者にデジタルに関心を持たせる入口として、見えづらい内部を知ること。機器を壊したり組み立てたりして、構造を知ってもらうような取り組みを行うのは面白そうだと感じているので、検討するのはどうか。


(渡邊氏):本日お伝えしていなかったKPIについて一言。KPIを短期間で見ている企業が多いが、3年など長い期間で見ることも必要ではないか。また、アウトプットも就労した人数に拘らず、トレーニングを受けたことにより自己効力感や自尊心が上がったのかなど精神的な変化も見たほうがよいのではないか。

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ダイアログ参列者

後列左から

リコージャパン㈱ 経営企画本部 経営企画センター コーポレートコミュニケーション部 部長 青木 聡

()リコー EGS戦略部 兼 プロフェッショナルサービス部 ESGセンター 所長 阿部 哲嗣

東大先端科学技術研究センター 教授    近藤 武夫様

()リコー プロフェッショナルサービス部 ESGセンター 事業推進室 CSVグループ 岡野 麻衣子

()リコー ESG戦略部 兼 プロフェッショナルサービス部 ESGセンター 

事業推進室 CSVグループ リーダー 阿部 裕行

前列左から

リコージャパン㈱ 経営企画本部 経営企画センター コーポレートコミュニケーション部 SDGs推進グループ リーダー 赤堀 久美子

株式会社 re:terra 代表取締役社長 渡邉 さやか様

認定特定非営利活動法人 育て上げネット 理事長 工藤 啓様

()リコー コーポレート執行役員 EGS戦略部 部長 鈴木 美佳子



有識者の皆さまには、ご多忙のところご参加いただき大変ありがとうございました。

今回のダイアログで、有識者の皆様からいただいたアドバイスを踏まえ、今後の活動に活かしていきます。