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新冷戦時代に必要な危機管理とは?

=日本危機管理学会が2019年度年次大会=

2019年07月01日

社会・生活

主任研究員
日本危機管理学会 常任理事 武重 直人

 日本危機管理学会は5月25日、2019年度年次大会(第28期)を東京・銀座の中小企業会館において開催した。今回の統一論題は「新冷戦時代に求められる危機管理」。折しもその主役であるトランプ米大統領の来日と重なり、白熱した議論が展開された。

 統一論題では、①米中の将来戦構想と日本の対応(下平拓哉・防衛省防衛研究所主任研究官)②経済安全保障におけるインテリジェンスのあり方(岩井克己・倉敷芸術科学大学客員教授)③米中摩擦の行方―過去の日米協議と比較して(中野哲也・リコー経済社会研究所副所長、武重直人・同主任研究員)―の研究報告が行われた。

20190701_01.jpg原田泉・日本危機管理学会会長の開会挨拶

 このうち、中野氏は足元の米中摩擦と1960~1990年代の日米協議との共通点及び相違点を分析。現在の米国の対中通商戦略にはかつての対日姿勢と酷似する部分が多いものの、安全保障や人権などの価値観といった全く異質な要素も含まれており、対立の長期化は避けられないと強調。その上で、中国の習近平政権が米国のトランプ政権の「外圧」を利用しながら、国内の民主化や構造改革を進めていく可能性も期待感を込めて指摘した。

 この後に行われたパネルディスカッションでは、パネリストがそれぞれの専門領域である安全保障やインテリジェンス、サイバー空間、エレクロニクスなどにみられる中国の巧みな戦略や米国の警戒感を紹介。フロアからの発言も相次ぎ、米中関係の今後の展開や日本のあるべき姿などについて示唆に富んだ議論が行われた。

20190701_02.jpgパネリストを務めた下平、岩井、中野の各氏(左から)

 自由論題では、①海外市場における撤退リスクに関する考察(榊原一也・国士館大学准教授)②2020年東京五輪・パラリンピックに向けて企業に求められる危機管理(小野愛・リコー経済社会研究所研究員)③都市のレジリエンスについて(増田幸弘・芝浦工業大学教授)④防災・危機管理教育の一つの試み グループワークによる「マイ・タイムライン」作成(村上智章・広島国際大学准教授)―の各研究が報告された。参加者は専門領域の垣根を越えて議論を交わし、有意義な洞察が多数得られた。

20190701_03.JPG専門領域の垣根を越えた議論

 会員総会では理事長の中野氏が、日本危機管理学会の一般社団法人化の手続きが完了した旨を報告し、会員を積極的に増やしていく方針を表明した。入会案内などは同学会ホームページを御参照いただきたい(https://crmsj.org/)。

(写真)筆者 RICOH GRⅢ

日本危機管理学会 常任理事 武重 直人

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※この記事は、2019年6月28日発行のHeadLineに掲載されました。

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