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イノシシは幸せを運ぶシンボル!

=2019年干支の素顔に迫る=

2019年01月10日

社会・生活

HeadLine副編集長
竹内 典子

 東京駅・八重洲地下街の広場「センタースポット」には、迫力満点のイノシシ像がある。高さ1.25メートル、幅1.6メートルのブロンズ製。表面には毛並みの加工が施され、にらみを利かせた形相で今にも動き出さんばかりだ。

 印象的なのはピカピカに光っている鼻。観光客らがご利益を求めて鼻先をなでていくからだ。実はこの像はイタリア・フィレンツェの新市場「メルカート・ヌオーヴォ」に置かれているのと同じもの。イタリアの著名な彫刻家ピエトロ・タッカ(1577~1640年)による大理石製の作品のレプリカで、フィレンツェでは「ポルチェッリーノ(子豚)」の愛称で親しまれている。

 彼の地では、「鼻先をなでると幸運に恵まれる」という言い伝えがあり、だから鼻先は輝いている。洋の東西を問わず、縁起物として親しまれているのは興味深いところだ。

20190110_01.jpg東京駅・八重洲地下街のイノシシ像

 ところで、2019年の干支(えと)はイノシシ(亥)である。中国の古代王朝・殷(いん)の時代から、十二支は時間や方角などを表すのに使われてきた。庶民に分かりやすくするため、後付けで動物を当てはめたものだ。日本ではイノシシに漢字の「猪」を充てるが、中国ではブタを意味する。つまり、中国の2019年は「ブタ年」となる。

 ブタはイノシシを飼いならして家畜化した生き物だ。日本に十二支が伝わった頃、日本では野生のイノシシが多く獲れたことや、ブタはまだなじみがなかったことから、「猪=イノシシ」になったと伝えられる。同じ漢字の国なのに、「猪」の字を見て違う動物を思い浮かべているというわけだ(ちなみに中国でイノシシは「野猪」)。

 今では、日本も食卓ではブタのほうがおなじみであり、イノシシといえば人里に現れて騒動になるなど悪いニュースばかり耳にする。そこであまり知られていないイノシシの生態を学ぶため、多摩丘陵に広がる多摩動物公園(東京都日野市)へ取材に向かった。

 多摩動物公園の設計は、動物の自由な姿を見せるというコンセプトに基づく。できる限り檻(おり)を使わないよう配慮された、自然に近い環境が特徴だ。50ヘクタールを超える敷地は「アジア園」「オーストラリア園」「アフリカ園」「昆虫園」―の4つのゾーンに分かれ、約320種類の動物や昆虫に出会うことができる。自然が大切に守られ、まるで山の中にいるような雰囲気が味わえる。

 正門から200メートルほど進むと、お目当ての「ニホンイノシシ」の檻に到着した。名前は「キントン」(メス、16歳)と、「クロマメ」(メス、12歳)の2頭。お正月を連想させる何やらおめでたい名前だ。

20190110_02.jpg多摩動物公園の正門

 イノシシの説明をしてくれたのは、ベテラン飼育員の佐々木真己さん。イノシシは植物を中心とした雑食で、ミミズや昆虫なども食べるという。運動場にはコナラやクヌギの木があり、秋にはドングリが落ちてくる。ドングリは皮を残して中身だけ上手に食べるそうだ。

 「普段はサツマイモとリンゴが中心ですが、春は園内で採れたタケノコなど季節の野菜も追加します」と佐々木さん。朝食の時間が近づくと、キントンもクロマメも脇目もふらず飼育員に駆け寄ってくる。

 柵の外側からリンゴを与えても、イノシシは鼻で押し返しプイっと顔を背けて食べない。でも大好きなサツマイモが全部なくなると、何事もなかったようにリンゴを食べ始める。

 また、いくつもの小さな穴が空いたガス管を使い、その穴にクマ用ペレット(=固形の人工飼料)を入れて与える。すると、鼻でゴロゴロと勢いよくガス管を転がし、穴からペレットが出てくるとすぐに平らげてしまう。ペレットがなくなるまで転がし続けるため、いい運動になるそうだ。

 イノシシは鼻を器用に使い、地面を掘り起こして大きな穴を空けたり、鼻先で70キロの物を持ち上げたりできるという。「甘いものも好きなようで、メロンをあげた時はとても興奮して鼻を鳴らしながら一心不乱に食べていました」―。佐々木さんは可愛らしい素顔を教えてくれた。

 飼育員にとってエサやりは、イノシシの健康状態をチェックする上でとても重要。食い付きの良し悪しだけでなく、口の中の様子や毛並み、体の傷の有無を観察する絶好の機会になるからだ。

20190110_03.jpgクロマメにエサをあげる佐々木さん

 本来、イノシシは臆病で警戒心が強いといわれる。取材に訪れた日は休園のため、園内では工事車両が行き来していた。クロマメは朝食が終わると、日光の当たる暖かい場所で昼寝を始めたが、車が柵の前を通るたびに目を覚まし、そわそわと歩き回る様子がうかがえた。最近では野生のイノシシが、都市部に出現し、農作物に被害を与えたり、車に衝突したりといったイメージが強いが、ここでは繊細な一面を見ることができた。

 「猪突猛進」という熟語から、イノシシは真っ直ぐにしか走れないように思われている。だが実際には、方向転換はもちろんバックもできる機敏な動物なのだ。もっとも園内では、突進するほど驚くことがないため、勢いよく走ることはほとんどないという。

20190110_04.jpgクロマメ(手前)とキントン(奥)

 訓練の様子も見せてもらった。佐々木さんが柵の外から棒を入れると、イノシシはその先端に鼻でタッチする。タワシを付けた棒で背中をこすると、柵のすぐ横に体を寝かせる。うまくできれば、ご褒美にクマ用ペレットがもらえる。このように意外なほど従順な姿を披露してくれた。これは、具合が悪くなった時に獣医の診察をおとなしく受けさせるための躾(しつけ)。注射から逃げ回らないように、元気な時に覚えさせておくというわけだ。

 こうして半日ほどイノシシをじっくり観察した後、冒頭のイノシシ像を改めて見に行ってみた。ちょうど、旅行客らしき女性が鼻の周りから目の辺りまでを念入りになで回している真っ最中。そこで先客に負けじと、鼻先の周りを何度も優しくなでながら願いを込めた。「イノシシの鼻のように、光り輝く年になりますように」―


多摩動物公園
http://www.tokyo-zoo.net/zoo/tama/
■所在地:東京都日野市程久保7-1-1
■入園料:大人600円(65歳以上300円)、中学生200円、小学生以下無料
■インフォメーション:
 毎年干支にちなんだイベントを企画。 2019年3月31日までは「3匹のいのしし」と題してイノシシ・ブタ・イノブタのキャラクターがイノシシの世界を紹介する。
*休園日などは上記ホームページをご参照ください。




(写真)筆者  PENTAX K-50など

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※この記事は、2019年1月1日発行のHeadLineに掲載されました。

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