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世界に一つだけのオルゴール作りに挑戦

=長野・下諏訪で歴史を学び、音色を体感=

2018年07月25日

社会・生活

企画室
竹内 典子

 疲れを感じたときのリラックス方法を、誰でも一つは持っているだろう。ゆっくり入浴する、好きなお酒をたしなむ...。

 気分転換には音楽もお勧めだ。筆者の最近のお気に入りはオルゴールを聴くことである。ゼンマイを手でゆっくり巻き、ふたを開け、瞳を閉じて流れてくる曲を聴いていると、ふーっと肩の力が抜けていく。子供のころ、バレリーナの人形がくるくると回る姿が楽しくて、オルゴールのゼンマイを何度も巻いたことを思い出す。

 オルゴールの癒やしの効果が気になりインターネットで調べた。すると、日本電産サンキョーオルゴール記念館 「すわのね」(長野県下諏訪町)でオルゴールの組立体験ができることを知り、5月中旬、自分だけのオルゴールを求めて訪れた。

 日本電産サンキョーは、前身の三協精機製作所が1947年オルゴールの研究に着手、翌1948年に試作第1号が完成した。日本のオルゴール業界のパイオニアであり、最盛期の1990年には年間9000万台を製造し、世界シェアの90%以上を占めたほど。世界に誇る諏訪ブランドを継承しながら、現在は高級オルゴールに力を入れている。

 記念館がある下諏訪町はJR新宿駅から特急で約2時間半、長野県のほぼ中央に位置する。諏訪湖を中心に諏訪大社や温泉など有数の観光スポットが点在。湿度が低いうえに澄んだ空気ときれいな水に恵まれていることから、戦後は時計やカメラなど精密機械工業が栄え「東洋のスイス」と呼ばれてきた。「すわのね」は、こうした自然と歴史が奏でる音色をイメージして名付けられた。

 到着すると、広報部長の井桁道和(いげた・みちかず)さんが笑顔で出迎えてくださった。まず案内されたのは、1階の「日本のオルゴールコーナー」。ここでオルゴールの歴史を学びながら、美しい音色への理解を深めることができる。

20180725_01.jpg高級オルゴール「オルフェウス」と井桁道和さん
(提供)すわのね

 オルゴールの起源は、中世ヨーロッパにさかのぼる。多くの町では中心に教会の大きな時計搭が立ち、時を告げる鐘が演奏されていた。オルゴールはその演奏装置が原型とされる。

 世界初のオルゴールは1796年にスイスの時計職人アントワーヌ・ファーブルによる「シリンダー型オルゴール」といわれる。円筒形のシリンダーが回転し、シリンダーに打ち込まれたピンが櫛歯(くしば)と呼ばれる振動板を弾く仕組みだ。井桁さんは「当初は職人がピンを1本ずつシリンダーに打ち込むなど手作業が多く、貴族や富裕層が楽しむ高級品だったのです」と説明してくれた。

 19世紀になると、新たに「ディスク・オルゴール」が登場。金属製のディスクの裏面に突起があり、ディスクの回転によって歯車状のスターホイールを動かし、櫛歯を弾く仕組み。ディスクは手動プレス機で手軽に生産できるようになる。レコードのようにディスクを交換することで、簡単に曲目の変更ができたため、またたく間に普及した。「録音の技術が無かった時代に、多くの人へ音楽と触れ合う喜びを届けたのです」と井桁さん。

 大型のディスク・オルゴールは、迫力のある音が実現でき、コインを入れて演奏するジュークボックスのような役割を果たし、レストランや酒場で重宝されたという。しかし、1877年にエジソンの蓄音機発明により、ディスク・オルゴールは自動演奏楽器の主役の座を奪われ、急速に衰退していく。

 2階の「世界のオルゴールコーナー」には、こうした歴史を物語る名器が数多く並ぶ。机ほどの大きさをした立派な木箱のシリンダー・オルゴールやアンティーク時計を大きくしたような冷蔵庫大のディスク・オルゴール、手回しで演奏するストリートオルガンなど見る者を飽きさせない。

 同じ階には「コンサートホール」も併設。日本電産サンキョーが誇る高級ディスク・オルゴール「オルフェウス」をはじめとして、スイス製、ドイツ製の「最高傑作」が並ぶ。映像とともに繰り広げられるユニークなオルゴールライブでは、音色の競演を楽しむことができる。

 オルフェウスの音の美しさの秘密を井桁さんに伺ったところ、「自分たちが良いと思う音をひたすら追求しているだけです。その音が世界のお客様に受け入れられていることは励みになります」―。海外からの来館者も増えており、2017年度の総来館者数は2年前の2倍の6万人に上ったという。

 オルゴールは精密機械であり、音質は技術者の腕に左右されるという。シリンダーやディスクの回転という限られた時間内に曲を落とし込む編曲のほか、櫛歯を研磨する技術や調律、部品のかみ合わせを担う技術が重要になる。

 世界のオルゴールメーカーの多くが調律などを機械化している中、日本電産サンキョーは長年経験を積み技術を磨いた数人のベテラン技術者による手作業にこだわる。「後継者も育成しながら、日本のオルゴールづくりを絶やさないように努力を重ねる日々です」と井桁さんは語る。

 こうしてオルゴールの歴史を学び、音色を堪能したところで、再び1階に降りて今回の目的だったオルゴールの組立体験工房に足を踏み入れた。

 まずはケース選び。木箱やハート形など素材や形により、音色も微妙に変わる。今回は定番の四角い木の箱を選択した。次に選曲。クラシックやJポップなど、約700曲が用意されており、どれにするか迷ったが、試聴したクラシックの定番「カノン」を選択、組立体験がスタートした。

 その作業は、シリンダーを本体に固定し、ゼンマイをセット、ドラムと櫛歯を組み合わせてケース内に組み込むという流れ。音色を大きく左右するのがドラムと櫛歯の噛合い(かみあい)の調節だが、これが難しい。

20180725_02.jpgオルゴールのムーブメント

 ピンが櫛歯をうまく弾く距離をつかみ、櫛歯の真ん中にピンが当たるように設置したいが、なかなか思うようにはできない。櫛歯をドラムに近づけては遠ざけて、右を上げて、左を上げてと四苦八苦。そのたびに音色を確認すると、ごくわずかの差で音の響き方が全く変わっていた。

 自分が一番美しい音色だと感じる場所でネジを締めて櫛歯を固定、やっと世界に一つだけのオルゴールが完成した。その間、40分ほどだったが、繊細な作業が続いたため、集中力が研ぎ澄まされたような感覚に陥り、職人気分を味わった。

 指導してくれた古厩(ふるまや)ひろ子さんからは、「オルゴールは単純な仕組みですが、機械なので動かさないと調節が必要になってしまいます。大切にしまわずに毎日聴くのが、一番いいメインテナンスです」とアドバイスを受けた。

20180725_03.jpgオルゴールの仕組みを説明する古厩ひろ子さん

 今回組立体験で選んだ曲は、今までにオーケストラのCDで何度も聴いているが、オルゴールで聴くと不思議とノスタルジーを感じる。思い出とともに、癒やしグッズを一つ増やして下諏訪を後にした。

20180725_04a.jpgストリートオルガンを実演する帯川あゆみさん


日本電産サンキョーオルゴール記念館「すわのね」
http://www.nidec-sankyo.co.jp/museum/
■入館料:大人1000円、小中学生500円 *16時以降の入館は割引あり
■組立体験料:入館料+ケース料金 *ケースは種類により料金が異なる


(写真)提供以外は筆者 PENTAX K-50

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※この記事は、2018年6月29日発行のHeadLineに掲載されました。

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