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紙には"おまけ"がついてくる!

=スマホでは得られない読書の楽しみ=

2017年11月29日

社会・生活

企画室
大林 裕子

 電車内は、スマートフォンに夢中になっている人ばかりである。通勤ラッシュ時でも、窮屈な車内でゲームやLINEに没頭している。ニュースも手元で読めてしまう。操作しているスマホが肩や背中にコンコンと当たり、「いま操作しなきゃいけないの!?」と言いたくなり、嫌な気分になる。そんな中で、本を読む人を見かけるとなぜか少しほっとする。私はやはり紙ベースで読む方が好きだ。

 私が幼稚園児のころ、『キンダーブック』という本があり、とても気に入っていた記憶がある。その本の裏表紙に掲載されている「ぴんくまちゃん」というピンク色のクマのお話が大好きだった。内容はすっかり忘れてしまったが、6コマほどのマンガ風の絵で、日常の些細(ささい)な出来事が書かれていたように思う。とにかく主人公のピンク色のクマが可愛くて仕方がなかった。

 その後、成長するにつれては時々「ぴんくまちゃん」のことを思い出し、絵本が気になっていき、自分でも「絵本が書けたらいいな~」などと考えた時期もあった。この「ぴんくまちゃん」が、本に興味を持たせてくれたのかもしれない。

 高校生のころ、小さな子供たちに絵本を読む機会があり、おじいさんやおばあさんの声色、動物たちの声を使い分けて読んで聞かせると、騒いでいた子供たちはだんだん話に夢中になり、時間がきて終わりにしようとしたら「もっと読んで」と大騒ぎになったことがあった。

 大人になってからは、ミステリー小説が面白くなり、寝る前に時間を忘れて読みふけることがよくあった。最近は、老眼で目が辛くなり、本格的なミステリー小説をじっくり読むことは少なくなってきたが、中にはテレビの2時間ドラマのように気軽に楽しめるものもあるため、今はそんなシリーズにはまっている。ミステリー小説は、後半になると早く結末を知りたくて焦ってしまう。そのためどうも読み飛ばしているようで、もう一度読み返して謎解きのトリックに納得し、あたらめて感心することがある。テレビドラマでは、役者さんによって犯人が想像できてしまうことがあるが、本は自分で勝手に想像した人物が演じるので、頭の中で大混乱が起きてかえってそれが面白い。

 本は、1ページ目を開き読み始めた時は左側が厚く重い。物語がずっしり詰まっている感じだ。読み進むにつれページが右側に移り、少しずつなぞ解きが進展していくとともに左側が軽く薄くなっていく。残り少なくなったページには犯人が隠れている。そう思うとワクワクドキドキすると同時に読み終わってしまう寂しさも感じる。時には、読みながら食べたクッキーのかすが本にこぼれ、油染みが残っていたりする。本をきれいに読みたい私としてはがっかりだが、その時の感情を思い出すことができるヒントや証拠が残されていく。

 スマホで読んだ時とは違う、何か"おまけ"があるような気がする。

20171127.jpg(写真)筆者

大林 裕子

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