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過疎地への対策と企業の貢献

直言 第9回

2015年10月01日

地域再生

所長
稲葉 延雄

 地方経済を考える際には、過疎地問題への目配りが欠かせないが、現在進められている地方再生の取り組みでも、必ずしも全ては解決できそうもない。

 現在の地方再生の努力は、均衡のとれた国土建設を目指してはいるが、どの地域でも平均して日本人が住むようになるわけでもないし、平均して豊かになるとは限らない。地方再生が成功すれば、地方でも人口の集積が起ころうが、それでも過疎の地域はその隣に存在し続ける。人口の過疎の問題は、地域社会自体の縮小で問題解決能力が低下していく上に、行政対応の面でも人的・財政的に弱体化を余儀なくされており、事態を困難にしている。

 それだけに、過疎地に住む人々が相応に豊かな生活を送り、人としての尊厳も維持される環境を確保していくためには、従来の発想を超えた抜本的な対応が必要である。この点では、最近の経済のネットワーク化の進展を活用することで、行政サービスのあり方や経済取引の仕組みの面で様々な工夫を凝らすことが可能になっている。

 例えば、過疎地に住む人々が高度な医療・介護サービスを享受するためには、遠隔地の医療機関との間で最新のネットワーク技術を活用した緊密な連携があれば可能になる。この点の試みとしては、6月30日に閣議決定された「日本再興戦略改訂2015」の中に掲げられている規制緩和策に見ることができる。

 すなわち、国家戦略特区における「遠隔診療や小型無人機等の近未来技術実証」がそれである。具体的には、僻地(へきち)での服薬指導や診療の対面原則の例外として、テレビ電話を活用することや遠隔診療が可能なケースを明確化すること―などが挙げられている。

 このように最近のネットワーク技術の進展は、過疎地に必要な組織が無く、人材が常駐していなくても、過疎地の人々が希望するサービスを受けることを可能にしている。この面の規制緩和措置がもっと広範囲に検討され、それらをきっかけに医療現場をはじめとする産業界が積極的な取り組みを行っていけば、過疎地の様々な問題も解決につなげていくことができよう。

稲葉 延雄

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※この記事は、2015年10月1日に発行されたHeadlineに掲載されたものを、個別に記事として掲載しています。

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