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現場職種でもテレワークは可能に

=アパレル業界の常識を破る「インスタ販売」=

2020年06月24日

新型ウイルス

研究員
河内 康高

 2020年6月19日、政府は都道府県境を越える移動の自粛を全面的に解除した。これからは、新型コロナウイルス感染予防と経済活動再開の両立が一段と重要になる。感染予防の観点からは在宅勤務に代表されるリモートワークが一気に普及したが、今後もその流れが反転することはなく、定着していく可能性が高いように思う。

 例えば、パーソル総合研究所(本社東京)が全国の正社員を対象にしたテレワーク実施率調査の結果によると、2020年3月(対象者2万1448人)は13.2%にとどまっていた。だが、緊急事態宣言後の4月(同2万2477人)は27.9%とほぼ倍増。うち1都3県(東京、神奈川、千葉、埼玉)に限ると、19.6%から43.5%まで上昇した。5月の緊急事態宣言解除後には、全国が25.7%、1都3県が41.1%と若干低下したものの、3月より高い水準が続く。

テレワーク実施率

図表(出所)パーソル総合研究所

 一方、職種別に実施率を見ると、二極化する傾向が指摘できる。経営企画やコンサルタント、商品開発・研究では4月から5月にかけて10ポイント以上上昇。これに対し、理美容師や販売職、配送・倉庫管理・物流などは元々低水準の上、5月には低下している。オフィスではなく、「現場」で仕事をする職種においては、テレワークの実施が難しい現状が浮き彫りになった。

職種別のテレワーク実施率(4月と5月の比較)

図表(出所)パーソル総合研究所

 現場で仕事をする「販売職」の中では、アパレルも大打撃を受けた業界の1つだ。理由としては、店舗休業や外出自粛による売り上げ減少のほか、長年抱えてきた構造的な問題も指摘される。それが、過剰在庫である。婦人服の製造・小売りを手懸ける、クロシェホールディングス(本社神戸市)代表取締役の沼部美由紀さんに電話で取材し、アパレル業界の現状や危機打開策などを聴いた。同社が全国で直営する店舗は10を数える。

 沼部さんによると、服の生産にはデザインしてから少なくとも半年かかる。このため、アパレル企業は数カ月後の消費者の嗜好や気候に確信を持てないまま、新作の企画を余儀なくされる。また、単価を引き下げるため、海外の工場に大量発注する。完売すればよいが、日本の場合はおよそ半数が売れ残ってしまうという。セールに回して値引きしても売れない場合、焼却処分せざるを得ない。

 この過剰在庫という構造問題に新型ウイルスの影響が重なり、アパレル業界は苦境に立たされている。店舗休業でも経費はほとんど減らない。それなのに、半年前に発注した新作が続々と入荷されるからだ。休業の間に初夏を迎え、もはや春物は売れない。その結果、在庫の山が高くなり、業界全体がその保管・処分に頭を悩ませているのだ。

 こうした中、沼部さんはピンチをチャンスに変えようと奮闘している。現場での販売職が多いアパレル業界にありながら、テレワークを積極的に推進するなど、常識破りの戦略を打ち出した。

 なぜ、アパレル業界では困難とされていたテレワークが実現できたのか。それは、インスタグラムによる「ライブ配信」での婦人服販売に踏み切ったからだ。販売員が推奨商品を着てみせながら、顧客からのサイズや質感などの質問に丁寧に答える。新型ウイルスの影響による店舗休業から、1カ月余で態勢を急きょ整えた。今では1回約15分の配信で平均10着以上売れており、販売効率だけならリアル店舗より高いという。このため緊急事態宣言解除で店舗を再開した後もライブ配信は続けており、一層力を入れていく方針だ。

写真「ライブ配信」の現場
(提供)クロシェ

 2つ目は業界の悪しき常識、つまり「半年前に大量発注」を止める決断である。今後はホームページ上で顧客から注文を受け付け、工場へ発注する方式に徐々に切り替えていく。2024年までに、売り上げの80%をこの受注販売にする計画を立てた。それによって無駄な在庫をなくし、コロナショックのような不測事態にも対応できる経営を目指す。在庫保管コストや人件費を圧縮できるため、お客様へ還元したり、新たなサービスを提供したりできるようになる。

 その一方で、顧客へ届けるまで2~3週間かかるというデメリットもある。「今すぐ着たい」という根強いニーズに対しては、致命的な欠点ともいえる。それこそが、他社が受注販売に踏み切れない理由だ。

 ではなぜ沼部さんは、業界のタブーというべき受注販売に舵を切ったのか。その理由を尋ねると、「資源を大量に使い、必要以上に作り、残りは焼却処分で地球を汚す...。こういう業界の常識に以前から疑問を持っていたのです。今回のコロナショックを契機に、大量在庫・店舗販売というビジネスモデルは通用しなくなると考えました。業界全体も変わってほしいと願っています」―。その言葉の端々から、婦人服と同じぐらい地球を愛する気持ちがひしひしと伝わってきた。

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