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日本の「働き方改革」と米国のギグ・エコノミー

産業・社会研究室 Vol.11

2017年02月06日

研究室から

研究員
可児 竜太

 日本では政官財が足並みを揃えて「働き方改革」を提唱し始めた。しかし、それは日本だけで起こっているわけではない。近年、米国を中心に「ギグ・エコノミー」という新たな労働の形態が脚光を浴びているのだ。個人が組織に所属せず、インターネットを通じて仕事を直接請け負うことによって成立する経済の仕組みだ。「フリーランス」と似た言葉であるが、インターネット上のマッチング・サービスを利用しながら、不特定多数の依頼者から「単発の仕事」を受注する点に着目した言葉である。

 これは、元々「ギグ」という言葉が、音楽バンドが幾つもの小さなライブハウスを掛け持ちして請け負う「単発の短い演奏の仕事」を指すことに由来する。

 ギグ・エコノミーと密接に関連するのが、配車サービスのUberや民泊サービスのAirbnbなどのシェアリング・エコノミーである(図表①)。これは、旅客の輸送や宿泊用家屋の提供が「ギグ(単発の仕事)」となるからだ。同様に、早くからギグ・エコノミー型サービスを手がける先駆者が、便利屋サービスTaskRabbitである。

(図表①)海外におけるシェアリング・エコノミー型サービスの例

20170130task1.jpg
(出所)総務省「社会課題解決のための新たなICTサービス・技術への人々の意識に関する調査研究」(平成27年)


 TaskRabbitは元IBMのソフトウエア・エンジニアが2008年に米ボストンで創業した米国のベンチャー企業だ。同社は、Uberと同様、依頼者と作業者をマッチングするプラットフォームを提供している。部屋の大掃除から食料品の買い物、ちょっとした修理作業まで、家庭で発生する様々な「雑用」を、手の空いている人やスキルのある人に依頼できる仕組みである。現在、米国内19都市と英国ロンドンでサービスを展開している。


(図表②)TaskRabbitの仕組み

20170130task2r.jpg
(出所)TaskRabbit より作成


 具体的な仕組みは次のようなものだ。①依頼者はTaskRabbitのサイトに頼みたい雑用を掲載する、②作業を提供しようという個人(「タスカー"Tasker"」と呼ばれる)はその依頼内容や条件を閲覧し、「対価」を提案する、③その提案に対し、依頼者は実際に発注するかどうかを決める、④もちろん、複数のタスカーから提案があれば、条件を吟味した上でタスカーを選ぶことも可能、⑤依頼者に掲載費用はかからないが、タスカーは仕事の完了時にTaskRabbitに受注金額の約15%を支払う(図表②)。

 仕事の依頼者に対して審査はない。しかしタスカーとして登録するには、TaskRabbitによる面接や身元調査、オンライン研修を受ける必要がある。見知らぬ個人同士をマッチングするため、「安全」や「品質」をこうして担保している。タスカー登録者の多くはリタイヤした会社員や大学生、主婦などである。軽作業はおよそ時給25~30ドルで取引され、重労働やスキルが必要な仕事ほど高額になる。例えば、引越し作業などは時給80ドルほどになるという。

 このため、タスカーの中には高い頻度で仕事を請け負い、週当たり2000ドル、月当たり6000~7000ドル稼ぐ「エリート・タスカー」もいる 。その場合でも、週25~30時間程度の労働時間で達成できるという。その顔ぶれは、趣味を生活の中心にしてすき間の時間に稼ぐ者や、将来へ向けてインターンとして取り組みながら働く者、失業時のアルバイトのつもりが本職になってしまった者など様々である。

 このように、米国ではギグ・エコノミーで生計を立てる者が現れ始めている。これは、社会に眠っていた様々なニーズをインターネットが掘り起こし、「細かな単位の仕事」に関する情報を需要・供給の両サイドが低コストで共有できるようになったためだ。企業組織が果たしてきた業務の仲介機能の一部をインターネットが代替し、一部の労働者は組織に縛られることなく、仕事を獲得できるようになったと言えるだろう。

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