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バイデン政権に評価下す米中間選挙

=ジンクスでは大統領与党が不利だが…=

2021年09月22日

内外政治経済

研究員
芳賀 裕理

 4年に1度の米国中間選挙(2022年11月8日)まで1年余。国民がバイデン政権に政策評価を下す重要な政治イベントであり、3年後の大統領選挙にも影響を及ぼす。本稿では連邦議会やその選挙の仕組みを解説しながら、来年の中間選を占う上で注目すべき分野を考える(選挙制度などは「世界年鑑2021」=共同通信社=を参考にした)。

Ⅰ.連邦議会の仕組み

 まず、連邦議会の仕組みを解説する。上院と下院から成る二院制。議事堂は首都ワシントンにあり、「キャピトルヒル」の愛称で親しまれる。二大政党制の下、現在の与党はバイデン大統領を輩出する民主党。上院の現有議席数は民主50、共和50で拮抗する。一方、下院は民主220、共和212である(欠員3)

写真米連邦議会議事堂(キャピトルヒル)
(出所)stock.adobe.com

(1)人事・条約承認権限を持つ上院

 上院の正式名称は「United States Senate」。通常はSenateと呼ばれ、その語源は古代ローマの Senatus(元老院)。人口規模にかかわらず、全米50州に等しく2議席ずつ与えられ、定数は100人。このため、人口が4000万人近いカリフォルニア州でも、人口が60万人未満のワイオミング州でも、選出される上院議員は同じ2人。1人ずつ、違う年の選挙で選ばれる小選挙区制だ。被選挙権(=立候補資格)は30歳以上で再選回数に制限はない。

 任期6年のため、定数100人を3 つのグループに分け、2年ごとに選挙を実施。だから4年ごとの大統領選と中間選では、必ず定数1の上院選も行われる。この仕組みにより、経験豊富な現職議員が常に全議席の3分の2以上を占める。上院議員が欠けた場合、通常は選出州の知事が後任を指名する。上院議長は副大統領が兼任し、本会議で可否同数の場合のみ「最後の1票」を投じる。

 下院にはない、上院の特別な権限としてはまず、大統領が指名した人事(=閣僚や大使、連邦裁判所判事、各省庁幹部など)の承認権がある。

 新政権の発足直後、バイデン大統領が行政管理予算局(OMB)長官に指名したニーラ・タンデン氏に対し、野党・共和党が「リベラル色が強い」として反発。与党・民主党からも異論が出たため、バイデン大統領は2021年3月に指名撤回を余儀なくされた。厳格な三権分立制の下、上院の持つ強力な人事承認権を象徴する出来事となる。

 このほか、大統領が外国と合意した条約について、それを批准承認するか否かも上院だけの権限だ。さらに、大統領が下院本会議で弾劾訴追された場合には、上院が弾劾裁判を開く。その後の上院本会議で出席議員の3分の2以上が賛成すると、大統領の有罪・罷免が決定する。歴史上、弾劾訴追された大統領はトランプ氏ら3人いるが、罷免されたケースはない。

 また、上院には採決を阻止する議事妨害(フィリバスター)という慣行がある。 由来はオランダ語で略奪者・海賊を意味する 「Vrijbuiter」。これを行使する議員は、法案採決に反対するために本会議場で延々と数時間も演説を続ける。

 フィリバスターが続く限り、上院では法案審議を打ち切って採決に入れない。打ち切るには6割の賛成が必要だ。民主、共和両党が50議席で拮抗する現状では、いずれもフィリバスターの厚い壁を破ることができない。このため、法案成立には与野党の協力が不可欠になる。

 過半数以上の賛成で上院を通過した法案は、下院でも可決されないと成立しない。両院が異なる内容の法案を通過させた場合、両院協議会で一本化し、それを採決。最終的に大統領が署名した上で法律として発効する。大統領は法案の拒否権を持つが、上下両院の本会議で出席議員の3分の2以上が賛成すれば大統領の意に反して法律となる。

(2)各州の人口比例で議席数が決まる下院

 下院(House of the Representatives)は通常、「House」と呼ばれる。10年に1度の国勢調査に基づく各州人口に応じ、定数435 人が割り振られる。

 現在、最も議席数が多いのはカリフォルニア州(53)。以下、テキサス州(36)、フロリダ州(27)、ニューヨーク州(27)、イリノイ州(18)、ペンシルベニア州(同)の順になる。逆に最も少ないのはアラスカ、モンタナ、ワイオミング、ノースダコタ、サウスダコタ、バーモント、デラウェアの各州の1議席である。

下院の州別議席数

図表 (出所)米下院やCNNを基に筆者

 一方、5つの準州と属領、すなわちコロンビア特別区(=首都ワシントン)、プエルトリコ、グアム、米領バージン諸島、米領サモア、北マリアナ諸島からは準議員が各1人選出される。法案審議には参加できるが、議決権はない。

 このため、準州などの有権者の不満は強く、首都ワシントン当局は「END TAXATION WITHOUT REPRESENTATION」(代表なくして課税を止めろ)」というナンバープレートのデザインを用意する。これは、英国からの独立戦争時に流布されたスローガンをもじったものだ。

 議決権のある議員を送り込めないのに、なぜ税金だけは州並みに徴収されるのかという、ワシントン市民の抗議表明なのだ。

図表首都ワシントンのナンバープレート
(写真)文室慈子

 下院議員の任期は2 年で、上院と同じく再選回数に制限はない。ただし上院と異なり、全員が同時に改選される。各州内にはいくつかの選挙区があり、それぞれ1 人ずつ議員を選出(=小選挙区制)。欠員が生じた場合、補欠選挙で補充される。下院本会議で多数党から選出される下院議長が、下院の議事を運営する。

 下院の特別な権限としては、①大統領に対する弾劾訴追②予算に関するすべての法案の先議③いずれの大統領候補者も選挙人票の過半数を獲得できなかった場合、大統領を選出―などがある。

上下両院の選挙制度

図表(出所)世界年鑑2021(共同通信社)などを基に筆者

Ⅱ.上下両院の政党指導部

(1)上院指導部(与党・民主党)

図表

(注)かっこ内は年齢(2021年9月28日時点)
(出所)各議員ホームページ

 与党・民主党の上院指導部には、4つの主要ポストがある。前述した通り、議長は副大統領が兼任し、現在はカマラ・ハリス副大統領(元上院議員、元カリフォルニア州司法長官)が務める。

 議長代行は通常、議会不在の副大統領に代わって議長職を務め、事実上の上院議長となる。上院議員の互選によるが、慣例として多数党から当選回数の最も多い古参議員が選ばれる。

 現在は民主党のパトリック・レーヒー氏。当選7回を誇る超ベテラン議員であり、農業、司法両委員会の委員長などを歴任。現在はバイデン政権の財政政策を支える歳出委員会の委員長を務める。

 院内総務は名実ともに上院のリーダーとして運営責任者となり、法案審議や人事承認などで采配を振るう。また、対外的に上院を代表する存在であり、議会とホワイトハウスの間で困難な調整役を担う。

 現在のチャック・シューマー氏は1980年、ニューヨーク州から29歳で下院議員に初当選。その後、上院議員に鞍替えし、当選を重ねて現在4期目。2016年、上院民主党の最高実力者だったハリー・リード氏の政界引退を受け、現職に就いた。ニューヨーク州出身者ならびにユダヤ系米国人の就任は初めて。

 この院内総務を補佐するのが、院内幹事である。米議会では政党指導部が議員の投票行動に対し、党議拘束を掛けられないため、指導部の指示に従わない「造反」も日常茶飯事。このため、院内幹事には各議員に同一会派として協調行動を促すという、難しい職務をこなす能力が求められる。

 現在のディック・ダービン氏(イリノイ州選出)は弁護士出身で、1997年から上院議員。司法委員会の委員長。議会で最もリベラルなメンバーの1人と見なされており、ダービン氏は「上院のトップリベラル」(米誌マザージョーンズ)と呼ばれる。

(2)上院指導部(野党・共和党)

図表(注)かっこ内は年齢(2021年9月28日時点)
(出所)各議員ホームページ

 院内総務には現在、ミッチ・マコネル氏が就く。フォード政権の司法次官補などを経て、1985年からケンタッキー州選出の上院議員。オバマ政権時代から院内総務を務める。米誌タイムが2015、2019両年に同氏を「世界で最も影響力のある100人の1人」として挙げた大物議員。だがトランプ前政権下では、ホワイトハウスと議会の板挟みで苦労を重ねた。夫人は台湾出身のエレーン・チャオ元運輸長官である。

 ジョン・スーン院内幹事(サウスダコタ州選出)は下院議員を経て2005年から上院議員。共和党政策委員長などを歴任後、トランプ氏が大統領候補の指名を受けた2012年共和党大会で委員長を務めた。

(3)下院指導部(与党・民主党)

図表(注)かっこ内は年齢(2021年9月28日時点)
(出所)各議員ホームページ

 与党・民主党の下院指導部には3つの主要ポストがある。下院議長は上院議長や日本の衆参議長と異なり、自らの判断で議事整理権を行使し、本会議では発言者を指名する。重要な局面では自ら演壇に立ち、議案への賛否を表明することも多い。

 ナンシー・ペロシ氏(カリフォルニア州選出)は2007年以降、下院議長として君臨する。初の女性、また初のイタリア系。父はメリーランド州選出の下院議員で、ボルチモア市長を務めた。

 ペロシ氏は中国の人権抑圧政策に厳しい態度をとり、民主党内では最も対中強硬的な議員の1人とされる。2008年、広島市で行われたG8下院議長会議に出席のため訪日。当時、米国の最高クラスの現職要人として、原爆死没者慰霊碑に献花を行った。

 ステニー・ホイヤー院内総務は1981年、メリーランド州選出の下院議員に就任以来、現在20期目。オバマ政権下ではリーマン・ショック後の雇用拡大を目指す「Make It In America計画」に取り組んだ。

 ジム・クライバーン院内幹事(サウスカロライナ州選出)は黒人でバイデン大統領の盟友として知られ、民主党予備選ではバイデン氏の大統領候補指名獲得に奔走した。また、新型コロナウイルス危機に関する特別小委員会の委員長を務め、感染拡大防止に尽力する。

 下院民主党のトップスリーは、ペロシ議長81 歳、ホイヤー院内総務 82歳、クライバーン院内幹事 81 歳。この状況を米メディアは「Gerontocracy(長老支配)」と揶揄(やゆ)する。

(4)下院指導部(野党・共和党)

図表(注)かっこ内は年齢(2021年9月28日時点)
(出所)各議員ホームページ

 院内総務は現在、ケビン・マッカーシー氏(カリフォルニア州選出)。2007年に下院議員に就任。増税反対で名を馳せ、院内幹事を経て2014年から現職。

 スティーブ・スカリス院内幹事は2009年からルイジアナ州選出の下院議員。2017年6月、反トランプ派の男に銃撃されて重傷を負うが、3カ月半で議会に復帰した。

Ⅲ.上下両院の委員会

 上下両院の各委員会の委員数は各党の議席数に比例して配分され、委員長には慣例として多数党の最古参議員が就く。現在、両院ともにすべての委員会の委員長が与党・民主党から選出されている。

 常任委員会の数は上院が17、下院は20。バイデン大統領は2001~2003年と2007~2009年、上院の花形ポストの外交委員会委員長を歴任。外交通の大物議員として活躍した。

 2001年同時多発テロでは、バイデン氏は敵対していたブッシュ(子)政権のアフガン侵攻作戦を支持したが、今回は大統領としてアフガン撤収という苦渋の決断を迫られた。

Ⅳ.中間選投票日の「なぜ」

 中間選は、大統領選の2年後に実施される上下両院の選挙である。4年ごとの大統領選の中間の年に行われるため、こう呼ばれる。州知事選などの地方選が中間選と同時実施されることも多い。

 中間選の投票日は大統領選と同じ「11月第1月曜日の翌日の火曜日」と法律で定められる。その理由としては、米国建国(1776年)当時、大半の国民が①10月までは農作業で忙しく、12月に入ると北部は積雪で移動が難しい②日曜日は教会に行く③投票所までは馬車で1日がかり、あるいは途中で宿泊が必要な人もいた―などが挙げられる。

 人口比例で議席が各州に配分され、知事が選挙区割りに影響力を及ぼす下院の選挙制度では、「ゲリマンダー」も特徴の1つだ。これは、19世紀初めのマサチューセッツ州知事エルブリッジ・ゲリーに由来する。

 彼が自分の所属政党に有利になるよう区割りした結果、いくつかの選挙区が奇妙な形に。そのうちの一つがサラマンダー(=ギリシャ神話に登場する架空のトカゲ)に似ており、ゲリーとサラマンダーを足し合わせて「ゲリマンダー」と呼ばれた。今も恣意的な区割りを批判する政治用語として使われる。

Ⅴ.現職大統領与党が苦戦するジンクス

 中間選では、現職大統領の所属する政党(=与党)が苦戦するというジンクスがある。今回、1990年以降の選挙結果を見ながらそれを確認する。

 結論から言うと過去30年間の中間選では、クリントン政権2期目が下院で、ブッシュ(子)政権1期目が上下両院で、トランプ政権1期目が上院でそれぞれ改選議席から増やした。だがそれ以外では、現職大統領の与党がすべて敗北を喫している。

 米政治サイト「FiveThirtyEight」のサラ・フロステンソン上級エディターは「長年の知見によると、概して中間選ではホワイトハウスにいない党がうまくいく」と指摘する。また、リコー経済社会研究所の中野哲也研究主幹(元時事通信ワシントン特派員)は「中間選では、有権者が大統領の力が強くなり過ぎる事態を警戒する。バランス感覚が働くために、大統領与党が議席を減らす傾向にあるのではないか」と推察する。

過去30年間の中間選結果

図表(注)かっこ内は改選議席。〇は改選議席数から増加、×は減少、△は横ばい。
(出所)各種報道を基に筆者

 以下、過去30年間の中間選の結果を大統領支持率や失業率、株価とひも付けて分析した。

(1)ブッシュ(父)、クリントン政権下の中間選

 図表

(注)は中間選の実施月、支持率は米ギャラップ
失業率は米労働省、株価はNYダウ平均株価
(出所)各種報道を基に筆者

 ブッシュ(父)政権下の1990年中間選では、レーガン前政権からの貯蓄貸付組合(S&L)破綻問題など経済政策が焦点となる。景気悪化で失業率が上昇し、支持率は低下する中で与党・共和党が苦戦を強いられた。上下両院ともに議席数を減らし、野党・民主党に過半数を許した。

 クリントン政権1期目の1994年中間選は、湾岸戦争後の景気拡大の下で行われ、失業率低下・株高という追い風が与党に吹いていた。にもかかわらず、与党・民主党は上下両院で敗北を喫した。

 当時、1期目のクリントン政権はレーガン政権以降の財政赤字拡大に歯止めを掛けるため、個人所得税と法人税を増税する方針を表明。これが有権者の不興を買ったのだ。

 例えば、中間選直前の米誌USニューズ・アンド・ワールド・レポートのアンケート調査では、20%がクリントン大統領を「大嫌い(Hate him)」、25%が「嫌い(Dislike him)」と答えていた。

 しかし、景気の長期拡大に伴い、クリントン人気は右肩上がりに。しかし2期目の1998年中間選は、クリントン大統領が不倫もみ消し疑惑で弾劾訴追を受けるという異常事態の中で行われた。

 にもかかわらず、黒人層を中心に人気は衰えなかった。半面、野党・共和党による大統領への執拗な攻撃が国民の反感を招く。結局、与党・民主党が善戦し、上院は現状維持で下院では5議席増やす結果となる。

(2)ブッシュ(子)政権下の中間選

図表(注)は中間選の実施月、支持率は米ギャラップ
失業率は米労働省、株価はNYダウ平均株価
(出所)各種報道を基に筆者

 ブッシュ(子)政権1期目は2001年の同時多発テロ(9.11)を受けて対テロ戦争を展開、支持率は一時驚異的な90%を記録した。その後低下したものの、依然60%を超える中で2002年中間選に臨んだ。

 失業率は上昇傾向だったが、戦時下の「強い大統領」への国民の期待がそれに勝り、与党・共和党が上下両院で議席を拡大。ジンクスが覆される結果になった。

 逆に、2期目の2006年中間選は、強行した対イラク開戦が国民から批判を浴び、支持率が40%を割り込む中で実施。与党・共和党が上下両院で議席を大幅に減らした。

(3)オバマ政権下の中間選

図表(注)は中間選の実施月、支持率は米ギャラップ
失業率は米労働省、株価はNYダウ平均株価
(出所)各種報道を基に筆者

 オバマ政権1期目の2010年中間選では、ホワイトハウスが推進した医療保険制度改革(オバマケア)が、「大きな政府」を嫌う野党・共和党の攻撃対象に。また、リーマン・ショック後の景気低迷で失業率が高止まりしていたこともあり、与党・民主党は上下両院で大敗した。

 2期目の2014年中間選は、失業率低下・株高と経済状況は好転していたものの、シリア内戦への介入躊躇(ちゅうちょ)などオバマ大統領の弱腰外交が批判の対象に。中間選としては2010年に続いて連敗を喫した。

(4)トランプ政権下の中間選

図表(注)は中間選の実施月、支持率は米ギャラップ
失業率は米労働省、株価はNYダウ平均株価
(出所)各種報道を基に筆者

 トランプ政権下の2018年中間選では、上院では与党・共和党が議席を増やしたものの、下院では完敗した。中間選の下院選で同党が200議席を割り込んだのはブッシュ(父)政権下の1990年以来、28年ぶりのことだった。

 大型減税の断行などで景気回復が加速し、株高や失業率低下は与党に追い風に。しかし、それ以上にトランプ派vs反トランプ派の対立や、格差拡大・社会分断が深刻になり、大統領支持率は40%前後で低迷した。それが下院選に大きく響き、2020年大統領選での敗北にもつながった。

Ⅵ.2022年中間選で注目すべきポイント

 それではバイデン政権下の2022年中間選はどうなるのだろうか。就任時(1月)の支持率はトランプ前大統領の45%に対し、バイデン大統領が57%と大きく上回る。

 しかし、これまで論じてきた通り、過去の中間選では大統領与党が苦戦するケースが圧倒的に多い。以下、来年の中間選を予測する上で、ポイントとなりそうな分野を挙げてみた。

(1)新型コロナ対策や内政「目玉政策」

 内政面では、バイデン政権の最優先課題は引き続き新型コロナウイルス対策。2021年9月17日時点で18歳以上の76%が少なくとも1回、ワクチンを接種済み。ただし、共和党支持者を中心にワクチン拒否の国民も少なくないため、接種率は伸び悩んでいる。接種率の低いテキサス州やフロリダ州など南部を中心に病床も逼迫する(米紙ニューヨーク・タイムズ電子版)。

 足元では、変異型の「デルタ株」の感染が急拡大し、猛威を振るう。8月半ばに1日当たりの新規感染者数が約半年ぶりに14万人を突破。9月19日時点でも14万8202人を、死者数は2011人を記録した。感染収束を見通すことができず、このままではバイデン政権にとって中間選で不利な材料になりそうだ。

ワクチン接種率の上位5州・下位5州(2021年9月17日時点)

図表(注)かっこ内は知事の所属政党
(出所)米紙ニューヨーク・タイムズ電子版を基に筆者

 また、内政面ではバイデン政権の「目玉政策」の成否も、中間選の結果を大きく左右しそうだ。インフラ投資や教育・子育ての拡充、気候変動対策などに対し、向こう10年間で3.5兆ドルを投じるという野心的な計画だ。

 しかし、米紙ウォール・ストリート・ジャーナルは次のように指摘する。「(上院で民主、共和両党の議席が拮抗する中で、議会審議の)行き詰まりが続くと、バイデン氏の立法議題の多くを可決するという民主党指導部の計画を遅らせたり、狂わせたりする可能性がある。来年の中間選に向け、各議員は既に(審議)時間枠の縮小に直面しており、論争の的となる法案の可決は一層困難になっている」―。

 バイデン政権が目玉政策を順調に実現できれば当然、中間選の追い風となる。逆に、できなかった場合や、民主党が共和党との妥協を迫られ事業規模が小さくなると、「公約違反」の批判を浴びて不利を招くのは必至だろう。

(2)高まる米国民の嫌中意識

 対中政策では、バイデン政権は基本的にトランプ前政権の対中強硬政策を引き継いだほか、人権問題では一層厳しい姿勢で臨んでいる。

 米世論調査機関ピュー・リサーチ・センターは2021年6月30日、世界主要先進17カ国・地域を対象にした「中国のイメージに関する世論調査」の結果を発表した。それによると、米国民の76%が中国に対し、「否定的な見方」を持っていると回答(参考=日本国民は調査対象国・地域の中で最高の88%)。前回調査(2020年10月)の73%からさらに上昇した。バイデン政権の対中強硬姿勢は中間選でプラスに働く可能性が高い。

(3)共和党に有利な下院議席配分

 前述した通り、下院の議席数は10年に1度の国勢調査に基づく各州の人口に応じ、定数435 人が割り振られる。

 2021年4月26日に公表された国勢調査の結果により、来年の中間選ではテキサス州が2議席、コロラド、フロリダ、モンタナ、ノースカロライナ、オレゴンの各州は1議席増。逆に、カリフォルニアやイリノイ、ミシガン、ニューヨーク、オハイオ、ペンシルベニア、ウェストバージニアが各1議席減る。

 増える7議席のうち、5議席は共和党地盤(=2020年大統領選でトランプ氏が勝利)。一方、減る7議席のうち5議席は民主党地盤(2020年の大統領選でバイデン氏が勝利)である。つまり、今回の議席数変更は共和党に有利に働き、バイデン政権・民主党にとっては痛手になりそうだ。

(4)18州で「投票制限」法が成立

 また、各州では有権者の投票資格を厳しくする「投票制限」の導入をめぐり、論議が白熱している。共和党の知事・州議会議員の多くは2020年大統領選での不正投票を理由に挙げ、投票制限を推進する。

 一方、民主党はそもそも不正投票が「でっち上げ」であり、投票制限は黒人らマイノリティー(少数派)の投票機会を奪うのが狙いだと激しく反発している。

 例えば、ジョージア州では2021年3月25日、不在者投票での本人確認を厳しくすることで、期日前投票の期間を事実上短縮するという法案が成立した。ニューヨーク大ブレナン司法センターによると、2021年に入って48州で投票を制限する法案が提出され、少なくとも18州で成立したという(2021年8月30日付朝日新聞)。

 仮に、同様の法案の成立がさらに広がっていくと、黒人ら少数派の支持を頼みとするバイデン政権・民主党にとっては、痛いマイナス材料となる可能性もある。

(5)アフガン撤収で支持率低下

 足元では、バイデン大統領の支持率が急速に低下している。その理由は、米軍のアフガニスタン撤収である。米政治サイト「FiveThirtyEight」がまとめた主要世論調査結果の平均によると、2021年8月30日に不支持率が支持率を逆転した。2021年9月16日時点の支持率は44%、不支持率は50%。

 英紙フィナンシャル・タイムズはアフガン撤収によって「バイデン氏の信頼は引き裂かれた」と主張する。さらに、米紙ウォール・ストリート・ジャーナルも「撤収をめぐるカオス(=混沌)は、バイデン政権初期に最大の外交危機を引き起こし、撤収の決定だけでなく、作戦の計画・実行に対する批判をもたらした」と指摘している。

(6)トランプ氏の動向

 一方、バイデン大統領にとって不気味なのは、前大統領の動向である。トランプ氏が2021年6月に大規模な集会を再開するなど、2024年大統領選出馬を視野に入れ、政治活動を本格化したからだ。

 2021年8月21日、トランプ氏はアラバマ州で集会を開いた。アフガニスタンからの米軍撤収をめぐるバイデン大統領の対応について、「米外交史上、最大の恥だ」と糾弾。さらに、「バイデン氏の不手際は国のリーダーとして恐らく最もひどい無能さを示している」と批判するなど、トランピアン(=トランプ支持者)を多数動員しては政権批判のボルテージを上げる。

 ただし、この流れが中間選を戦う共和党にとって、必ずしもプラスになるとは限らない。下院共和党は2021年5月12日、ワイオミング州選出のリズ・チェイニー下院議員(=父はチェイニー元副大統領)をナンバー3の同党会議議長から解任した。同氏はトランプ氏批判の急先鋒だけに、この人事は前大統領の共和党指導部への影響力が依然強大なことを裏づけた。

 一方、チェイニー氏更迭の後、トランプ政権で政府高官を務めたマイルズ・テイラー氏は有力共和党員150人以上が署名した文書を公表。「(共和党)結成時の理念に専念した党に再構築するか、代替(となる党)をつくることを急ぐ」ことを提案した。このように、共和党内では反トランプ派の運動も活発化している。

 仮に共和党が分裂するような事態になれば、バイデン大統領・民主党が有利になるのは間違いない。2022年中間選では、「陰の主役」をトランプ氏が務めるのかもしれない。

図表政治活動を本格化するトランプ氏(参考写真)
(出所)国立公文書館の公式ツイッター
(@President Trump 45 Archived)

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※この記事は、2021年9月29日発行のHeadLineに掲載予定です。

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