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バイデン政権を支える女性閣僚

=米国史上「最も多様な政権」を目指す=

2021年04月07日

内外政治経済

研究員
芳賀 裕理

 ジョー・バイデン米大統領(民主、78)は2021年1月、就任式後の初仕事として、異例の15本に上る大統領令に署名した。地球温暖化対策の国際的な枠組み「パリ協定」への復帰など、トランプ前政権(共和)からの抜本的な政策転換を早速アピールした格好だ。この「Build Back Better」(より良い再建)を推進するバイデン大統領を支え、注目を集めるのが多数起用された女性閣僚の面々だ。本稿ではこのうち6人をとり上げ、その横顔を紹介する。(注)年齢は2021年3月31日時点

写真(出所)バイデン氏のツイッター(@JoeBiden)

 内政面ではまず、バイデン政権にとって新型コロナウイルス対策や経済立て直しが喫緊の課題だ。外交政策でも、深刻化する米中対立への対応や、トランプ前政権時代に悪化した同盟国との関係修復など課題が山積する。

 こうした政策を分断が深刻化した米国社会で実現するために、バイデン大統領は多種多彩な人材を指名して組閣。大統領選でダイバーシティ(多様性)を重視する姿勢を鮮明にし、「米国史上多様性に最も富んだ政権」という公約を実行に移した。16に上る閣僚ポスト(=副大統領と長官の合計)では、女性やマイノリティ(社会的少数派)が実に11人を占めた。

 うち女性が6ポスト。カマラ・ハリス副大統領(56)のほか、ジャネット・イエレン財務長官(74)、デブ・ハーランド内務長官(60)、ジーナ・レモンド商務長官(49)、マルシア・ファッジ住宅都市開発長官(68)、ジェニファー・グランホルム・エネルギー長官(62)という顔ぶれだ。

 非白人では、ハリス副大統領が黒人・アジア系であり、ロイド・オースティン氏(67)は黒人初の国防長官、アレハンドロ・マヨルカス氏(61)はヒスパニック系初の国土安全保障長官。デブ・ハーランド氏はネイティブアメリカン(先住民)初の閣僚として内務長官に指名された。

 ほかにヒスパニック系では、ハビエル・ベセラ厚生長官(63)とミゲル・カルドナ教育長官(45)。マルシア・ファッジ住宅都市開発長官は黒人である。大統領選の民主党予備選に出馬し、同性愛者を公言したピート・ブティジェッジ氏(39)も運輸長官に起用されるなど、多様性を具現化する布陣となった。

バイデン大統領が指名した閣僚人事図表(注)黄色マーカーが女性
(出所)ホワイトハウス、各種報道を基に筆者

 今回の大統領選で米CNNテレビが行った出口調査によると、女性有権者のうち57%、黒人の87%、ヒスパニック系の65%がバイデン氏にそれぞれ投票したという。トランプ氏との激戦を制したバイデン氏は、勝利に導いてくれた女性やマイノリティの支持者に報いた組閣を実行したといえるだろう。

 米国で初の女性閣僚が誕生したのは1933年のこと。第1期フランクリン・ルーズベルト政権(民主)で労働長官に就いたフランシス・パーキンス氏が最初だ。

 以来、第1期レーガン政権(共和)を除くと、歴代政権発足時に女性閣僚は少なくとも1人は起用されてきた。今回、バイデン大統領が指名した6人は史上最多。閣僚に限らず、閣僚級といわれる政権屋台骨を支える要職についても、女性の登用が目立つ。その中で話題を呼んでいる閣僚・閣僚級の横顔を以下に紹介する。

フォード政権以降の女性閣僚数(政権発足時)
図表(注)赤は共和党、青が民主党
(出所)各種報道を基に作成

1.次期大統領候補?ハリス副大統領

写真(出所)ハリス氏のツイッター(@KamalaHarris)

 女性初・黒人初の副大統領となったハリス氏。バイデン氏が大統領選を制した後の演説で、ハリス氏が「女性では初の副大統領になるが、最後ではない(while I may be the first woman in this office, I won't be the last.)」と発言。大きな話題を呼んだ。

 ハリス氏はジャマイカ出身の経済学者の父と、インド出身の乳がん研究者の母を持つ。バイデン氏が公約した「最も多様性に富んだ政権」を象徴する人物といえよう。ハリス氏は首都ワシントンのハワード大学卒。黒人に高等教育の機会を与えるため、奴隷解放後に連邦政府から助成を得て創立された大学だ。その後、カリフォルニア大学ヘイスティングス・ロースクールを経て弁護士資格を取得した。

 検事としてキャリアを重ねた後、2011年に女性初・黒人初のカリフォルニア州司法長官に就任した。リーマン・ショックの引き金となったサブプライムローン問題の後始末に奔走。住宅を差し押さえられた州民救済策をまとめる中で、民主党内で有望株として注目を集める。

 2016年11月、連邦上院議員選で初当選し、黒人女性として史上2人目の上院議員に。民主党の大統領選予備選に出馬し、討論会ではバイデン氏の過去の黒人差別を追及した。一躍注目を浴び、最終的にバイデン氏から副大統領候補として指名された。

 史上最高齢で米大統領に就任したバイデン大統領については、「2期目を目指さない」という見方もあり、ハリス副大統領は次期大統領の最有力候補の1人と目される。また、バイデン大統領が何らかの理由により任期途中で退任する場合、憲法の規定に基づいてハリス副大統領が後継大統領に就く。

 ただし、懸念材料はワシントンでの政治経験の浅さ。ロン・クレイン大統領首席補佐官は米紙ニューヨーク・タイムズに対し、「バイデン大統領は非常に明快な指示をわれわれに与えた。そしてわれわれのゴールとは、ハリス副大統領を可能な限り大衆の目に触れさせることである」と述べている。

 このため注目されるのは、ハリス副大統領がどの分野で実績を積み重ねていくかだ。当初は、バイデン大統領が上院議員時代に経験の豊富な外交を主導する一方で、ハリス副大統領は司法制度改革など内政を主に担うとの見方が一部で浮上していた。

 だが米紙ワシントン・ポストは、実際にはハリス副大統領は就任からわずか6週間でバイデン外交において不可欠な役割を果たしていると指摘する。例えば、ハリス副大統領はバイデン大統領とは別に少なくとも6人の世界の指導者と話をしており、この数字は新副大統領としては異例に多いという。

 私生活では、2014年に弁護士のダグラス・エムホフ氏と結婚。同氏は世界的な法律事務所DLA Piperの共同経営者だった。大統領選ではハリス氏の演説に寄り添い、ともに戦った。セカンドジェントルマン(副大統領の男性配偶者)として、ハリス副大統領をどう支えていくかにも注目が集まる。

2.経済再建の重責担うイエレン財務長官

写真(出所)イエレン氏のツイッター(@JanetYellen)

 2014~2018年に女性初の米連邦準備制度理事会(FRB)議長を務めたイエレン氏。在任中、量的緩和政策の縮小や利上げを実現する一方で、失業率を低水準に抑え込み、金融市場のほか議会からも高い評価を得る。バイデン大統領は卓越した調整能力などを買い、女性初の財務長官に起用した。

 労働経済学者であるイエレン氏は雇用を重視する。今回は新型コロナウイルスの感染拡大により大打撃を受けた米経済再建の重責を担う。3月11日に成立した1.9兆ドル(約200兆円)規模の新型ウイルス追加経済対策が実行に移されると、財政面からの刺激効果が強過ぎてインフレ懸念が台頭するとの指摘もあり、難しい舵取りが求められそうだ。

 イエレン氏はブラウン大学とイェール大学で学び、カリフォルニア大学バークレー校教授、FRB理事を経て、クリントン政権で米大統領経済諮問委員会(CEA)委員長。2004年サンフランシスコ連銀総裁、2010年にはFRB副議長に就任した。

 夫は2001年にノーベル経済学賞を受賞したジョージ・アカロフ氏(共著「アニマルスピリット」東洋経済新報社、2009)。息子も経済学者という学者一家として知られる。

3.中国語に堪能な「通商弁護士」タイUSTR代表

写真(出所)ホワイトハウス

 閣僚級ポストの通商代表部(USTR)代表に、白人以外の女性として初めて指名されたのが、キャサリン・タイ氏(46)。両親は中国出身で台湾を経て米国に移住。タイ氏は米国で生まれ、ハーバード大学ロースクールなどで学んだ。通商弁護士として活躍し、流暢な中国語を話すことでも知られる。

 オバマ政権下のUSTRでは、中国問題の法律顧問を歴任。知的財産権侵害や輸出規制などをめぐり、世界貿易機関(WTO)に中国を提訴した経験がある。

 トランプ前政権が北米自由貿易協定(NAFTA)に代わる米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)の発効を目指した際、民主党の法律顧問として活躍。ホワイトハウスや共和党との調整に尽力し、超党派合意で法案が成立するよう舞台裏で奔走した。その手腕が民主党の実力者ナンシー・ペロシ下院議長(81)から高く評価され、絶大な信頼を勝ち取ったとされる。

4.バイデン政権の「顔」サキ大統領報道官

写真(出所)ホワイトハウスのツイッター(@PressSec)

 連日、ホワイトハウスで記者会見に臨み、大統領腹心として重要なメッセージを世界中に発信。その一方で、記者団から容赦ない厳しい質問を浴びるのが、大統領報道官である。「政権の顔」というべき、このポストに就いたのはジェン・サキ氏(42)。オバマ政権でホワイトハウス副報道官や広報部長、国務省報道官を歴任した広報のプロフェッショナルだ。

 サキ氏は就任後初の記者会見で「真実と透明性を取り戻すことがバイデン大統領の仕事だ」と強調した上で、「自由で独立した報道が民主主義で果たす役割に深い敬意を持っている」と表明。大半の既存メディアを「フェイクニュース」と決めつけ、対決姿勢をとり続けたトランプ前政権とは対照的な姿勢を鮮明にした。

 特筆すべきは、サキ氏を筆頭にホワイトハウス広報チームの要職が女性で占められたことだ。これは史上初めて。メディア側もホワイトハウス担当記者を女性に変更するなど対応に追われた。

 女性広報チームの顔ぶれを紹介すると、バイデン・ハリス選対のカリーヌ・ピア顧問は大統領副報道官に、ペロシ下院議長の広報部長などを務めたアシュレー・エティエンヌ氏が副大統領の広報部長にそれぞれ就任。ファーストレディとなるバイデン夫人の広報部長には、オバマ政権下でバイデン副大統領報道官を務めたエリザベス・アレキサンダー氏が起用された。

5.コロナ対策など内政担うライスDPC委員長

写真(出所)ライス氏のツイッター(@AmbRice46)

 スーザン・ライス氏(56)はオバマ政権で黒人女性初の国連大使を務め、大統領補佐官(国家安全保障担当)などを歴任した。この民主党の大物が今回、国内政策会議(DPC)委員長として復活を果たした。

 ホワイトハウスでは、国家経済会議(NEC)が経済政策問題の調整に当たり、国家安全保障会議(NSC)は外交・安保政策を担当する。これに対し、DPCは新型ウイルス対応のほか、労働、教育、住宅、環境といった内政全般にわたり指導力を発揮する。

 バイデン大統領の組閣過程でライス氏は一時、国務長官候補として浮上した。しかし、オバマ政権下で起こったリビアでの米領事館襲撃事件への対応をめぐり、ライス氏は共和党から激しい批判を浴びた経緯がある。

 このため、バイデン氏は上院承認を必要としないホワイトハウス高官として、ライス氏を起用したという見方が根強い。また、ライス氏には対日強硬派の横顔もあり、国務長官見送りで胸をなで下ろした日本の外交関係者は少なくない。

 ライス氏は経済学者の父と教育政策学者の母の間に生まれ、スタンフォード大学で歴史学を専攻。英オックスフォード大学大学院では国際関係論の博士号を取得した。民間企業で経営コンサルタントとして働いた経験もある。

6.金融政策で政権支えるブレイナードFRB理事

写真(出所)FRB

 FRBは政府・議会から独立して金融政策を運営する米国の中央銀行だが、本稿ではラエル・ブレイナードFRB理事(59)をバイデン政権のキーパーソンの1人として紹介したい。

 現在のFRB理事はトランプ前大統領よって指名されているが、ブレイナード氏だけがオバマ元大統領に指名された民主党系理事。2022年にパウエルFRB議長の任期が満了した際には、有力な後任候補となる可能性もある。

 パウエル議長率いるFRBはコロナ禍に立ち向かうため、金融緩和を維持して景気回復を目指す政策を推進する。だが、雇用回復の足取りは重く、経済格差の拡大も指摘される。その一方で、金融緩和や大規模な財政出動の副作用として、インフレ懸念に伴い長期金利が上昇すると、金融政策の舵取りは一段と難しくなる。一方、パウエル議長の発する一言に株式市場は一喜一憂する。

 こうした中、ブレイナード氏の手腕に対する評価は非常に高く、一時は財務長官就任も取り沙汰されていたほどだ。それが実現しなかった理由として、米ブルームバーグ通信は「バイデン次期大統領の関係者が(ブレイナード氏に)FRB内にとどまるべきだと伝えた」と報じており、バイデン氏はブレイナード氏にパウエル議長を支える役割を期待したとみられる。

 ブレイナード氏は米外交官の娘で、東西冷戦期のドイツとポーランドで育った。ハーバード大学で経済学博士号を取得し、マサチューセッツ工科大学(MIT)のビジネススクールで准教授を歴任。オバマ政権では財務次官(国際担当)を務め、リーマン・ショック後の金融危機対応で活躍した。

 ブレイナード氏の夫は、知日派として知られるカート・キャンベル氏。今回、バイデン大統領からNSCに新設されたインド太平洋調整官に指名された。キャンベル氏はクリントン政権で国防次官補代理として沖縄・米軍普天間飛行場の返還問題に携わり、オバマ政権で国務次官補としてアジア重視の外交政策を推進した。

写真米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)
(写真)中野 哲也

「女性登用」3つの分類

 こうして見てくると、バイデン政権を支える女性閣僚・閣僚級は3つに分類できそうだ。

 すなわち、①「次」を見据えたポスト(大統領候補のハリス副大統領、FRB議長候補のブレイナードFRB理事)②実績ある民主党系大物(イエレン財務長官、ライスDPC委員長)③一芸に秀でた逸材(タイUSTR代表、サキ大統領報道官)―である。

 その一方で、全員に共通する資質もある。それは極めて高い実務能力であり、「仕事師」バイデン大統領らしい人事と言えよう。その公約「Build Back Better」(より良い再建)が実現するかどうかは、女性閣僚の活躍に懸かっていると言っても過言ではないだろう。

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※この記事は、2021年3月31日発行のHeadLineに掲載されました。

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