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キラリと光る青春の汗=「ライティング講座」優秀作品④

=大怪我で分かったサッカーの本質=

2017年03月31日

健康・スポーツ

リコージャパン株式会社 流通・サービス事業本部第三営業部
高橋 駿介


 リコー経済社会研究所はリコーグループの中堅・若手社員を対象に、「ライティング講座」を開催しています。その受講生が書いたコラムのうち、優秀な作品を随時掲載します。(主席研究員 中野哲也)



 汗がキラリと光る―。「青春」と聞いて思い浮かぶものは、まずスポーツ(部活動)ではないだろうか。冬の高校サッカーや夏の甲子園は、男子であれば一度は夢見る晴れ舞台。汗水たらして全員で一つの目標に向かう姿こそ、青春の代名詞だと思う。

 テレビや映画でも「青春」は鉄板ネタである。例えば、夢や希望を失っていた不良高校生たちが一人の熱血教師との出会いにより、甲子園への挑戦を始める「ルーキーズ」。夢中になれるものがない、ごく平凡な男子高校生たちが、シンクロナイズドスイミングに挑む青春活劇「ウォーターボーイズ」―

 彼らが夢に向かう姿は勇ましい。挫折や失敗を何度も繰り返し、試行錯誤を重ねながら、成長していくからだ。「絶対にあきらめない」「仲間を信じろ」―。口に出せば恥ずかしい言葉の一つひとつに、青年を奮い立たされる魔力がある。「大げさだ」と思いながらも、ついついドラマに見入ってしまう。恥ずかしさをぶち壊す、感動を与えてくれるからだろう。

 こうしたドラマや映画ではまず、監督が映像で表現したい選手のイメージを役者に伝える。一流の役者はたとえスポーツの経験が無くても、そのイメージ通りに演じてみせる。だが、それだけでドラマが出来上がるわけではない。見えない所で多くのスタッフが支えているのだ。スポットライトを浴びる人だけでなく、浴びない人も舞台裏で汗を流す。光と影のどちらが欠けても、感動を与える名作は生まれない。

 それはスポーツにも言えることだろう。選手としてプレーする側と、監督・コーチとしてチームを動かす側が存在する。どちらもチームに欠かすことができない。

 6年前のこと。大学入学直後、サッカー部でインカレ出場を目指した筆者は突然、目の前が真っ黒になった。医師から「半月板損傷、全治1年」と診断されたのだ。希望が絶望に豹変するほんの一瞬の間に、たくさんのことが頭の中をよぎる。そして、明るい光が差し込んでいた温かな場所から、真っ暗で冷たい世界へ突き落とされた感覚に陥った。なぜなら、半月板損傷は選手生命に大きくかかわる重い外傷だからだ。

 受け入れられなかった・・・。物心ついてから、サッカーボールしか追いかけてこなかったからだ。ところが怪我によって、追いかけるのはみんなの後ろになってしまった。技術も体力もチームメイトに負けない自信があったのに...。まともに歩けるようになるまで半年以上かかった。焦りは嫉みに変わり、腐っていく自分...。それを見て見ぬふりをするしかなかった。

 そんな姿を見かねたのか、「リハビリと食事のメニューを作ったから、一緒にやっていこう」―。突然、学生コーチが声をかけてくれたのである。真っ暗な心の闇の中に、一筋の淡い光が差し込んできた瞬間だった。

 正直に言うと怪我をするまで、学生コーチを見下していた。厳しい練習に付いて来られなかった「脱落者」、つまりチームメイトではないと勝手に決め付けていたのだ。しかし、学生コーチは選手一人ひとりのコンディションや怪我の具合、練習から試合に至るまで活動記録をすべてノートに書き留めていた。そして毎日、欠かさずストレッチとマッサージをしてくれたのである。

 ようやく自分は気づいた。与えられた環境に甘えていただけだと...。「やってくれて当たり前」「自分は選手だからエライ」といった傲慢な固定観念に支配されていたのである。

 ナイター照明がグラウンドを覆う。怪我人を支えてくれる学生コーチやチームの舵をとる監督、そしてピッチの中で走り続ける選手に対し、光が等しく降り注ぐ。そしてみんなの汗がキラリと光る。その姿はやっぱり気持ちがいい。これからもずっと、そのキラリを忘れることはない。

20170328takahashi_600.jpgナイター照明が降り注ぐグラウンド

(写真)筆者

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高橋 駿介

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