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水素活用の機会と課題(第3回)

=日本はどう取り組むべきか=

2021年06月22日

地球環境

主任研究員
遊佐 昭紀

 【編集部から】リコーグループは2021年6月を「リコーグローバルSDGsアクション月間」と定めました。
当研究所もSDGs関連のコラムを公開致しますので、御愛読のほどお願い申し上げます。


 第2回で論じたように、水素社会を実現するためには水素の需要拡大に対応可能な供給システムの構築が必要条件になる。しかし、その条件を満たして水素エネルギーを社会に定着させるのは容易でない。第3回では、日本が水素社会を目指していく上で、取り組むべき技術・コスト・インフラなどの課題を整理する。

水素製造法は「グレー」「ブルー」「グリーン」

 水素製造にはさまざまな方法があるが、天然ガスや石油のような化石燃料や、水などから製造するのが主流である。原料の違いのほか、生産過程でのCO2排出の有無によって3つに大別される。

水素の製造方法
図表(出所)リコー経済社会研究所

 国際エネルギー機関(IEA)の報告によると、現在世界の水素需要は約7000万トン。そのおよそ4分の3を、天然ガスからつくられるグレー水素が占める。つまり、製造段階でCO2を排出しているわけだ。したがって水素の社会実装を進める上では、製造時にCO2を排出しない「ブルー水素」や「グリーン水素」の活用が重要になる。

 しかし、製造時に排出されるCO2にCCUS(=CO2を回収・再利用する技術)を適用するブルー水素や、再生可能エネルギー由来の電力を使うグリーン水素は、現状では製造コストが高い。このため日本では当面、安価なグレー水素を活用することが、将来のブルー水素やグリーン水素の社会実装・需要拡大を目指していく上でも現実的な選択肢になるだろう。

日本における水素製造サプライチェーン

 次に、水素製造のサプライチェーンについて解説する。前述の通り、水素はその製造方法によって施設が異なり、また製造適地の地理的な制約にも考慮が必要になる。そこで日本に焦点を合わせ、こうした課題を考えてみたい。

 日本国内で製造されている水素のほとんどは、石油精製・化学、苛性ソーダ、アンモニア、鉄鋼などの各業界において製造時に生み出される「副生水素」。内訳は、こうした産業での自家消費が約2億6000万トン、外販が300万トン強。日本国内の供給可能な余剰水素は約9600万トンと推計される。

日本国内の水素のマテリアルフロー
図表(出所)日本機械学会論文「製造から消費までを考慮した水素マテリアルフローの作成」(2015)を基にリコー経済社会研究所

 第2回で紹介した通り、政府は2050年までに水素供給量が2000万トンに拡大する未来図を示している。この数字は国内の余剰水素の4分の1にも満たず、数字上は十分可能である。

 しかし、余剰水素のほとんどがグレー水素であり、そのままではサプライチェーン全体のCO2排出量を削減できない。そこで水素製造にCCUSのプロセスを組み込み、グレー水素をブルー水素に切り替える取り組みが必要になる。

 CCUSについては、第2回でとり上げた「メタネーション」のような産業プラントに直結した資源化だけでなく、さまざまな資源をつくり出す新たなイノベーションにも期待が高まる。実際、各国でCCUS関連のスタートアップ企業が続々と登場しており、ブルー水素の調達機会は拡大していくだろう。

CCUSを手懸けるスタートアップ企業
図表(出所)リコー経済社会研究所

福島県浪江町に「水素エネルギー研究フィールド」

 一方、今は副生水素として大量に生み出されているグレー水素も、生産工程で使う化石燃料がクリーンエネルギーに転換されていくと、生産量が今後減少することも考えられる。そこで、グリーン水素自体の製造の商用化も必要になる。

 それについては、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構NEDOや、東芝エネルギーシステムズ、東北電力、岩谷産業が福島県浪江町で取り組んできた。2020年2月、再エネを利用した世界最大級となる10メガワット時の水素製造装置を備えた「福島水素エネルギー研究フィールド(FH2R)」が完成し、稼働を始めた。毎時13.4トン(定格運転時)の水素を製造する能力を持つ。クリーンかつ低コストの水素製造技術を確立が目標だ。

 だが現状では、再エネ由来の電力はなお高価である。水素生産において再エネの余剰電力の活用する可能性もあるが、採算面では現状高コストになってしまう。したがって、当面はなお日本国内でのグリーン水素生産には課題が多い。

水素の各製造方法のCO2排出量と経済性(国内)
図表(出所)資源エネルギー庁「水素の製造、輸送・貯蔵について」(2018)を基にリコー経済社会研究所

 このように大きな期待を背負い、需要拡大が予想される水素だが、ブルー水素やグリーン水素の調達については現状困難な制約条件が存在する。したがって安定確保のためには、コストダウンをもたらす画期的なノベーションが必要となる。

「資源価値なき」オーストラリア産の褐炭に注目

 需要拡大が予想されるブルー水素やグリーン水素について、海外で生産し日本へ輸送するプロジェクトが始まっている。

 まずブルー水素の海外調達では、川崎重工業や岩谷産業、シェルジャパン、J-POWERなどが参加する技術研究組合「CO2フリー水素サプライチェーン推進機構(HySTRA=ハイストラ)」が、NEDOやオーストラリア政府の補助金などを活用。オーストラリア産の褐炭を利用した水素製造・輸送・貯蔵サプライチェーンの実証を進め、2030年頃の商用化を目指している。

 褐炭は石炭と同時に採掘される。水分が多くて使い勝手が悪い上、自然発火の恐れもあるため、「輸送に適さない若い石炭」とされ、資源価値がほとんどなかった。だが今、この褐炭を燃焼させてガス化した上で、水蒸気を加えて水素を製造する方法が注目を集める。その製造時に発生するCO2はCCS(=CO2を回収して貯蔵する技術)によって地中に埋めるため、「ブルー水素」が実現可能になるのだ。しかも褐炭が安価で調達も容易なため、水素製造コストの引き下げも期待される。

世界の褐炭の分布
図表(出所)経済産業省「第2回2050年に向けたガス事業の在り方検討会」資料を基にリコー経済社会研究所

 一方、CCSを必要としないグリーン水素の調達検討も始まった。国内の大手商社は建設会社と組み、オーストラリアで小型の水電解装置の開発を進める。太陽光発電のコストが安い同国に設置することで、生産コスト(水素1キロ当たり)を現状の3分の1程度の2豪ドル(=約160円)以下に抑え、2023年稼働を目指している。当面は年間300トンの水素を生成し、現地の工場や燃料電池(FC)バスなどに供給する。しかし先述したハイストラによるサプライチェーンなどが実現すると、日本はグリーン水素を海外から大量調達することも可能になる。

検討中の海外からのカーボンフリー水素調達

図表(出所)経済産業省「第2回 2050年に向けたガス事業の在り方検討会」資料を基にリコー経済社会研究所

海外から日本に「水素」を輸送するには?

 ただし、水素を海外から日本へ輸送するためには、乗り越えるべき高いハードルがある。水素は体積当たりのエネルギー密度が低い(=天然ガスの3分の1程度)ため、輸送時の嵩(かさ)が膨らんでしまうのだ。このため、高密度化して輸送可能な技術確立が不可欠なのだ。

 効率よく運搬するためには、①水素をマイナス253℃で液化した上で、液化天然ガス(LNG)と同程度まで体積を圧縮(=水素の気体→液体で体積は約800分の1に)し、液化水素として輸送する②水素とトルエンを反応させた上で、メチルシクロヘキサン(MCH=常温・常圧で液体となりガソリン・石油と同様に扱える)に変えて輸送する③窒素を絡めてアンモニアとして輸送する―などさまざまな方法の開発・実証が進んでいる。前述したハイストラでは、①が検討されているという。

 このように、日本でも水素をめぐり海上輸送の検討やインフラの技術開発などが本格化してきた。だが、これまで水素は海上輸送が想定されておらず、法規制面で各国の足並みが乱れる懸念も拭えない。海外からのブルー水素・グリーン水素の安定調達を実現し、調達価格を大幅に引き下げるためには、国際的なルールづくりも急がなくてはならない。

図表図表

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