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水素活用の機会と課題(第2回)

=なぜ脱炭素化で期待されるのか=

2021年06月21日

地球環境

研究員
亀田 裕子

 【編集部から】リコーグループは2021年6月を「リコーグローバルSDGsアクション月間」と定めました。
当研究所もSDGs関連のコラムを公開致しますので、御愛読のほどお願い申し上げます。


 「水素活用の機会と課題」第2回は、水素の活用について解説する。なぜ脱炭素化を図る手段として水素が期待されるのか。また、どのような分野で社会実装が進むと予測されるのだろうか。

 「2050年カーボン・ネットゼロ社会」を目指す世界的な潮流が勢いを増す中、注目が急速に高まっているのが「水素」である。燃やしても水しか排出せず、しかも発熱量は炭素の約4倍。クリーンかつ熱効率がよいエネルギーとして目されているのだ。

 中でも水素の将来性に大きな期待を寄せているのが、二酸化炭素(CO2)排出量の多い発電所や化石燃料産業などのエネルギー転換部門である。国際エネルギー機関(IEA)によると、2018年の世界全体のCO2排出量のうち、エネルギー転換部門が47%を占める。つまりカーボン・ネットゼロ社会に向け、「電気の脱炭素化」「化石燃料使用の低減」は避けて通れないハードルなのである。

 そこで、各国は気候変動対策への水素政策の導入を積極化している。例えば、ドイツは「水素製造・活用拡大を促進することにより、2050年のカーボン・ニュートラル化を確実にする」と重視する。水素社会への移行を見据え、その市場構築や技術開発において世界をリードしようという野心も透けて見える。

 同様に日本政府も水素の社会実装が進むと予測し、2017年に「水素基本戦略」を閣議決定。2018年に策定した第5次エネルギー基本計画には、太陽光や風力などの再生可能エネルギーと並んで、水素を「新たなエネルギーの選択肢」として盛り込んだ。さらに2020年12月の「2050年カーボン・ニュートラルに伴うグリーン成長戦略」では、2050年に想定される「脱炭素電源構成」のうち水素・アンモニアの比率を10%に設定した。

 今、水素にはどのような社会実装が期待されているのか。英石油大手BPの「Energy Outlook 2020」は、世界が低炭素エネルギーシステムへ移行するのに伴い、「発電」「運輸」「建物」「産業」の4分野で水素はますます重要な役割を果たすと指摘する。こうした分野では、2050年のカーボン・ネットゼロに向け、水素利用が飛躍的に拡大すると予測されているのだ。以下、分野ごとに述べる。

日本政府が水素火発を「最大限追求」

 前述した通り、世界的にCO2排出量が最も多いセクターは、エネルギー転換部門である。日本でも国内CO2排出量(2019年度)のうち、発電所などが4割を占める。電力の7割以上を依存する火力発電では、石油や天然ガス、石炭などの化石燃料を使用するため、大量のCO2を排出してしまう。

日本の電源構成比(2019年度)

図表(出所)環境省「2019 年度温室効果ガス排出量(確報値)について」を基にリコー経済社会研究所

 したがって、日本が「2050年カーボン・ネットゼロ」を目指す上では、エネルギー転換部門でのCO2排出抑制が必須になる。太陽光や風力などの再エネは利用が増えているものの、国内で施設の適地は限られており、発電量の拡大は容易に進まない。

 こうした中、期待が高まるのが水素を燃料にして発電を行う「水素火力発電」である。水素は多様な方法で製造可能な上、燃やしても水しか出さないのが大きなメリットだ。前述した政府のグリーン成長戦略においても「(水素火力発電を)選択肢として最大限追求する」と記されている。

FCVは乗用車から商用車にも拡大へ

 運輸部門からのCO2排出量のうち、自動車が85%を占める。このため、水素を動力源として使用する燃料電池(FC)に関心が高まる。その代表格が燃料電池車(FCV)である。FCVでは水素と酸素を反応させ、燃料電池に取り込む電気をつくり、それによりモーターを回して走る。このため、CO2排出量削減への大きな貢献が期待されるのだ。

 国内では大手自動車メーカーが、乗用車として既にFCVを販売中。今後、長距離輸送を担う大型トラック・バスのほか、物流でもフォークリフトなどへの応用を視野に入れる。

 燃料電池の活用はFCVにとどまらない。大手ガス会社の「エネファーム」は家庭用の燃料電池だ。都市ガスやLPガスから取り出した水素と空気中の酸素を反応させ、電気をつくる仕組みだ。同時に発生する熱も給湯などへ利用できる。いわゆるコジェネレーション(熱電併給)である。

「メタネーション」がガス事業を脱炭素化

 重油や石炭をエネルギーとして主に利用する産業分野では当然、水素活用の必要性が高くなる。鉄鋼やセメント、石油精製・化学などの高温加熱工程で使用されるエネルギー源は、電気への切り替え(=電化)が非常に難しい。このため、大幅な低炭素化を実現するためには、こうした産業分野でこそCO2を排出しない水素を活用する必要がある。

 例えば国内の大手ガラスメーカーは2020年2月、ガラス溶解窯の主燃料である天然ガス・重油の代替エネルギーとして、水素を利用する実証実験を開始すると発表。仮に天然ガスをすべて水素に転換できれば、CO2を80%削減できると期待される。

 一方、水素とCO2 を合成し、燃料となるメタンをつくる「メタネーション」の実証実験も進められている。メタンは天然ガスとほぼ同じ成分で、既存の都市ガスインフラを活用できる。また、天然ガスの生産工程などでは大量のCO2が排出される。現在、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が技術開発に取り組んでいる。政府も2050年カーボン・ニュートラルに向け、「ガスの脱炭素化」の一環として水素の直接利用(先述した水素発電)とメタネーションの活用を打ち出している。

水素社会が成立する条件とは?

 これまで紹介してき水素活用社会は、どのような条件が整えば成立するのか。経済産業省は2019年の「水素・ 燃料電池戦略ロードマップ」で、「水素利用の飛躍的な拡大」を目標に掲げた。例えば輸送におけるFCVの普及や、エネファームなどでの定置用燃料電池の利用など、確立済みの技術を使い、水素関連の需要を伸ばすわけだ。

 このほか、現在実証が進んでいる水素発電の導入のほか、重厚長大産業でも水素の利用機会を創出することが大事だ。つまり、これまでの水素の限定的な用途を大幅に広げ、あらゆる分野を視野に入れることが必要になる。

 それと並行して、大規模な水素供給システムの確立が求められる。現在の水素の年間供給量は300万トン規模。これに対し、前述した「グリーン成長戦略」において、政府は2050年までにおよそ2000万トンの水素が供給されるという未来図を描いた。

 水素の需要が急拡大すれば当然、大量に供給しなくてはならない。輸送も含めた国内外サプライチェーンの構築も欠かせない。水素政策を需要と供給の両輪で走らせることにより、水素の製造コストを現在のおよそ5分の1程度にまで引き下げられるという試算もある。こうした条件が整うことで、未来の水素社会は初めて成立するのだ。

2050年水素社会が成立する条件
図表(出所)リコー経済社会研究所


図表図表

 

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