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水素活用の機会と課題(第1回)

=2050年に向けた脱炭素化への道のり=

2021年06月18日

地球環境

研究員
山本 晃嗣

 【編集部から】リコーグループは2021年6月を「リコーグローバルSDGsアクション月間」と定めました。
当研究所もSDGs関連のコラムを公開致しますので、御愛読のほどお願い申し上げます。


 「わが国は2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、すなわち2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指すことをここに宣言致します」―。2020年10月、菅義偉首相はこのようにうたい上げ、カーボン・ネットゼロの実現を国内外に公約した。だが日本にとって非常に高いハードルであり、その前途は険しいと言わざるを得ない。

 こうした中、脱炭素社会を目指す上で期待が急速に高まるのが、水素の活用である。当研究所は連載企画「水素活用の機会と課題」を3回に分けて公開する。まず第1回では、2050年目標と現実のギャップをとり上げる。

2030年・2050年の目標と現状のギャップ

 新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、2020年は世界経済が大きなダメージを受けた。さまざまな国際会議も相次いで延期となり、同年11月に予定されていた国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)も例外ではなかった。

 その延期によって各国の地球温暖化対策の停滞が懸念される中、2020年10月、国際エネルギー機関(IEA)は各国が表明済みの政策を基に、将来の地球温暖化を予測した報告書「World Energy Outlook 2020」を公表した。

 それによると、各国の「表明済み政策シナリオ」の積み上げだけでは、「パリ協定」で示した「2050年に世界の平均気温上昇を産業革命前と比較して、2℃より十分低く抑え、1.5℃以内に抑える努力を追求すること」は到底実現できない。このため、報告書はさらなる取り組み強化が必要だと警鐘を鳴らした。

 とりわけ2030年まで約10年間の取り組みが重要になる。エネルギー転換、産業、運輸、建物の主要4部門でどれだけパリ協定シナリオと現実のギャップを埋められるかが焦点になる。このうち、エネルギー転換部門(=石炭、原油、天然ガスなどの一次エネルギーを、電力やガソリン・軽油・重油などの二次エネルギーに転換する部門)が削減を最も求められる。

主な地域・国の地球温暖化対策の目標と政策
図表(出所)各種報道に基づきリコー経済社会研究所

 2021年4月にオンライン開催された、米政府主催の気候変動に関する首脳会議(サミット)には40の国・地域が参加。ホスト役のバイデン米大統領が「今後10年で気候変動危機による最悪の結果を避けるための決断をしなければいけない」と呼び掛けた。それに応じる形で、米国や英国、日本などが2030年までの野心的なCO2削減目標を公表した。

 2021年11月には、延期されたCOP26も開催される予定。それに先立ち、6月11~13日に英コーンウォールで開催された先進7力国首脳会議(G7サミット)でも地球温暖化をめぐり議論が行われた。採択した首脳宣言の中で、G7は「遅くとも2050年までの温室効果ガス排出ネットゼロの実現に向け、足並み揃えて野心的かつ加速させた努力にコミットする」と強調、各国が団結して気候変動問題に取り組む姿勢を表明した。

 また、名指しを避けながらも、G7は最大の温室効果ガス排出国である中国に対して「パリ協定の下でのコミットメントの強化」を要求した。このような動きからも、国際的な脱炭素化の潮流がますます勢いを増すことには疑う余地がないであろう。

激増中のグリーン投資、ダイベストメントも活発に

 このように地球規模で脱炭素化の取り組み強化が求められる中、コロナ禍で大きく落ち込んだ経済活動の復興支援という目的もあり、環境関連の「グリーン投資」が拡大し続けている。

 英国に本拠を置く国際NGO「Climate Bonds Initiative (CBI)」が公表している世界のグリーンボンド(=環境プロジェクト資金を調達するための社債)発行実績によると、2012年の31億ドルから2020年には2699億ドルに激増。2021年の発行額は4000億~4500億ドル程度へ一層拡大すると見込まれている。

 同時に、「ダイベストメント」の動きも急速に強まっている。これは、金融機関が気候変動に悪影響を及ぼす化石燃料関連の産業・企業を投資対象から外し、既存の投融資を引き揚げるもの。各国の政策誘導もあり、金融面でも脱炭素化への取り組みが活発化している。

脱炭素化の実効性高める「カーボン・プライシング」

 経済活動において脱炭素化の実効性を一段と高めるために期待される政策が、炭素税や排出枠取引制度などの「カーボン・プライシング」である。

 2021年6月7日時点で、炭素税と排出枠取引制度は64の国や地域、都市で導入済み(世界銀行ホームページ)。炭素価格(=CO2排出量に対する排出コストや政府が決定する税率)はまちまちだが、総じて上昇傾向にある。スウェーデンの場合、1991年の1トン当たり約3000円から、2019年には約1万5000円まで引き上げられている。

 先に述べたように、従来政策の延長線上では「パリ協定」の目標達成は程遠い。そこで炭素価格を引き上げ、経済活動の脱炭素化を推進する手法に寄せられる期待は大きい。

 S&P ダウ・ジョーンズ・インデックスは、カーボン・プライシングの普及に伴い、炭素価格が将来大幅に上昇すると予想する。パリ協定に沿って温室効果ガス排出量を削減するには、十分な対策の実行が不可欠。それによってOECD諸国の炭素価格は2020年の20ドルから、2030年には120ドル、2050年には190ドルまで上昇すると試算される。

脱炭素社会の実現に重要な水素

 これまで述べたように、2050年脱炭素社会の実現は各国が表明してきた政策だけでは難しく、さらなる取り組みを迫られる。中でも最も貢献するのが、1次エネルギーの脱炭素化であり、まずは太陽光発電や風力発電を元にする再エネからつくる電力の確保が必須だ。

 一方で、容易に電化できない、高温の熱エネルギーを大量消費する産業分野も存在する。このため、電化以外の手段による脱炭素化も重要となり、そこで期待されるのが水素なのだ。

 英石油大手BPが2020年9月に公表した「Energy Outlook 2020」によると、2050年には技術と水素投入のコスト低下に炭素価格の上昇も相まって、水素は現行燃料との競争が可能になり、利用が拡大していると予測する。その結果、2050年までにエネルギー源としての水素は全最終エネルギー消費の16%、産業セクターに限ると18%を占めるという。

 さらに、化石燃料などのエネルギー消費に伴い排出されるCO2と、水素を合成することにより、メタンを作り出し、これを燃料として利用することも可能である。これを「メタネーション」と呼ぶ(第2回参照)。

 このように水素は今後、経済成長と脱炭素化を両立させる上で、重要な役割を果たすとみられる。したがって、現在の企業活動に直ちに関係しない場合でも、水素をより広範に利用する社会の到来を念頭に置いておくべきだろう。ただし現時点においては、水素活用には未解決な課題があり、さらなるイノベーションが必須になる。

 第2回以降では現在、どのような水素活用が具体的に検討されており、どういったイノベーションの可能性があるのか。さらには、水素社会を成立させるための条件や課題を整理していきたい。

図表図表

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