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山・里・海がつながった南三陸町

=国際認証が結ぶ林業と漁業=

2018年07月20日

地球環境

研究員
間藤 直哉

 東日本大震災から丸7年が過ぎた。壊滅的な被害を受けた宮城県南三陸町では、バイオマス産業都市構想のもと、環境に優しく災害に強い町を目指して復興が進んでいる。

20180713_01.jpg 今もクレーン車やショベルカーが動き回る南三陸町。津波被害の象徴として残る旧防災対策庁舎の鉄骨は、巨大な盛土に覆い隠されようとしている。海岸沿いでは、巨大な防潮堤を建設中だ。この風景だけ見れば、生活や観光の再建は遠い先のように感じるかもしれない。

20180713_02.jpg盛土と旧防災対策庁舎

 だが、車で走っていると、町の中心に真新しい平屋の建物群が見えてきた。2017年3月にリニューアルオープンした「南三陸さんさん商店街」だ。28店舗が軒を連ね、生活品や土産物などを販売している。店先には地元の素材を使った加工食品や工芸品と一緒に、たくさんの海産物が並ぶ。世界的な建築家の隈研吾氏が設計した木造の建物自体も復興のシンボルだ。建材に南三陸の杉が使われているのである。

20180713_03.jpgさんさん商店街

 さんさん商店街の建物と海産物。実はどちらも、環境に優しい町づくりの成果なのだ。それぞれに関わった南三陸森林組合と宮城県漁業協同組合の担当者に、取り組みの内容と狙いを聞いた。

 南三陸町は海のイメージが強いが、実は山と里と海がつながった町である。このつながりを示すのが、「山のエコラベル」といわれるFSC(森林管理協議会)認証と「海のエコラベル」といわれるASC(水産養殖管理協議会)認証の両方を町で取得していることだ。FSCとASCを同じ町が取得するのは、世界で初めてという。

 南三陸森林組合の山内日出夫参事は、「FSC認証で問われることは以前から取り組んできたことだが、認証取得をきっかけに意識がさらに高まった」と説明する。

20180713_04.jpg南三陸森林組合の山内日出夫参事

 例えば、山での作業中、沢にごみを出さないよう細心の注意を払うのはもちろん、チェーンソーのオイルを環境に優しい種類に切り替えたり、オイルがこぼれにくい容器を使ったりしている。認証取得には経費がかかるうえ、手続き上もさまざまなハードルがあるが、こうした意識の向上が図れたことは大きな成果だったという。

 認証取得の際には、山の相続がうまく進んでいるかどうかも問われる。日本で森林整備が進まない原因の一つに、所有者が分からない山林の増加がある。FSC認証を取得し維持することは、所有者や境界が不明となる問題の防止にもつながっている。

 FSC認証を取得した森林の木材を利用した建物づくりも始まった。南三陸町の役場本庁舎もその一つだ。FSC認証が認知され、こうしたプロジェクトが国内で増えれば、将来は収益の向上にもつながるかもしれない。

 南三陸森林組合では、これ以外にも木材の価値を高める取り組みを進めている。広葉樹から家具を作ったり、広葉樹チップからティッシュペーパーを生産したりするのもその一環だ。認証の条件である「経済的に継続可能」という観点からも、こういった活動が実を結ぶかどうかは重要になる。林業に携わる人たちの給与や待遇が、経済的に回っていくレベルかどうかのカギを握るからだ。

 実は、こうした林業の活性化にはもう一つの隠れた効果がある。漁業への好影響だ。山と海はつながっているのである。さんさん商店街で見られる「地元の木材で造った店と、そこに並ぶ海産物」は、そのつながりを物語っているのだ。

 山から湧き出た水が川を下り、志津川湾に流れ込む。つまり森林経営は、志津川湾のカキ養殖と密接に関わっている。山と里と海のつながりが人々の営みを支えているのだ。先述のASC認証取得に奔走したのが、宮城県漁業協同組合の志津川支所戸倉出張所の星昌孝班長代理だ。

20180713_05.jpg宮城県漁業協同組合志津川支所戸倉出張所の星昌孝班長代理

 震災後の東北地方では多くの漁業が壊滅的な被害を受けた。ほとんどの漁港が元の状態に戻す「復旧」を目指す中、戸倉は「よりよい未来を目指した復興」を掲げ、新しい取り組みをスタートした。星さんによると、「震災以前、養殖施設が増えすぎて海の環境が悪くなっていることを、多くの漁業者が感じていた」からだ。研究機関などの助言を採り入れ、養殖いかだなどを適切な数に制限し、間隔も広げるなどの措置をとった。

 結果は意外に早く現れる。カキの収穫までに、震災前は2~3年かかっていたが、1年に短縮されたのだ。大きさも震災前の1.5~2倍に育っていることが確認された。震災前の課題だった海の環境悪化の懸念も消えていった。戸倉のカキ養殖は、持続可能な経営へと進化したのである。

 環境への悪影響が減って持続可能となったカキ養殖は2016年、ついに日本初のASC認証を取得することになる。認証の取得と維持にコストはかかるが、カキの価格にすぐ反映されることはなかった。しかし取得から1年半経過したころ、環境への取り組みが進んでいる大手スーパーから戸倉のカキが認められ、高値で買ってくれるようになったという。

20180713_06.jpg南三陸町・戸倉の漁港

 他の業者からの引き合いも増え始めているが、星さんは「海産物の出荷量を1年を通じて高水準に保つために、まだやれることはある」と話す。ネットショップでカキを含めた地元の海産物を購入できるようにしたのも、知名度やブランド力を上げる狙いがある。

 南三陸町は未曽有の大震災からの復興を目指す上で、森林と海の両方の持続可能性を追求。そして尊い努力が実を結び、森林経営と養殖業の間で好循環が実現した。こうした「隠れたつながり」の発見は、地球温暖化防止などの困難な課題に取り組む上でも極めて有効ではないだろうか。

(写真)筆者 PENTAX Q7

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※この記事は、2018年6月29日発行のHeadLineに掲載されました。

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