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パリ協定が発効!

【環境・資源・エネルギー研究室】 Vol.1

2016年10月12日

地球環境

主席研究員 
則武 祐二

 2020年以降の気候変動問題に対する新たな枠組み「パリ協定」が、今年11月に発効されることが決定した。発効要件は、55カ国以上かつ世界の排出量の55%以上の国が批准することであり、10月6日に要件を満たして、発効が決定した。同日時点での加盟国と排出量は下図のとおりであり、ほとんどの主要排出国の首脳が気候変動に対して危機感を持ち、それぞれの国で決定にこぎ着けた。今年5月に伊勢志摩で開かれたG7サミットで宣言された2016年度中の発効に向け、米国や英国、フランス、ドイツ、カナダが積極的に活動した結果である。米国のオバマ大統領が排出量の多い中国、インドの首脳に働きかけ、早期の批准で合意し、両国共に実行したことも大きかった。当初は日本に対しても、早期批准によりパリ協定発効のリード役が期待されたが影響力を示すことはできなかった。

 これにより、今年11月7日からモロッコのマラケシュで開かれる予定の国連気候変動枠組み条約第22回締約国会議(COP22)の際に、パリ協定に関する詳細ルールを決めるパリ協定第1回締約国会議(CMA1)が行われることになる。この会議に正式メンバーとして議論に参加するためには、10月19日までに批准することを国連に連絡しなければならない。しかし、日本は急きょ10月11日に国会への提出を閣議決定したが、他の審議事項との関係で国会承認を期日までには得ることは難しいため、CMA1では審議に参加できなくなる。

 パリ協定の発効により、重要なことは次の点である。

①パリ協定は法的拘束力のあるものである。
②各国の目標(約束草案)は、5年毎に見直し・提出が必要になる。
③各国の目標及び進捗状況については、パリ協定の目標である地球の温度上昇が2℃以内、さらには1.5℃以内となるように、整合性評価や促進的対話が必要となる。
④これまでに提出された各国目標では、2030年の温室効果ガスの排出量は567億トン。2℃以内目標を達成したとしても151億トン超過していることが条約事務局発行の報告書に示されており、各国目標は厳しくせざるを得ない。

 こうした詳細ルールは、CMA等で議論されることになるので、日本が早期に批准を決定し、国際的な議論に参加できることを期待したい。また、パリ協定の発効により、企業も厳しい対応が望まれることを覚悟する必要があり、気候変動による極端な気象現象等による被害の防止のために不可欠な活動であると認識すべきである。すでに多くの主要排出国の企業は、これを認識し、行動していることも理解しておくべきであろう。

(図) パリ協定の批准状況(10月5日時点)
各国の排出量割合(%)

20161012noritake3_600.jpg(出典)World Resources Institute(WRI) 「CAIT Climate Data Explorer」を基に環境・資源・エネルギー研究室にて算出・作成

則武 祐二

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