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中国経済「独り勝ち」は続くか

=高貯蓄率問題のカギ握るネット消費=

2021年01月14日

中国・アジア

主任研究員
武重 直人

 中国は世界で最初に新型コロナウイルスの感染爆発に見舞われた。しかし即座に、ロックダウン(都市封鎖)を含む強力な感染抑制策を断行。このため、2020年4月頃から経済活動は本格的に再開した。

 2020年4~6月期の実質GDP(国内総生産)成長率は前年同期比3.2%と、いち早くプラス回復。7~9月期も、前年比マイナスが続く日本や欧米を尻目に4.9%とプラスを維持しており、「中国経済の独り勝ち」と報じるメディアも出てきた。

各国実質GDP成長率(前年同期比)

図表.png(出所)CEIC

 ただし、V字回復の中身を見ると、回復力の持続性には疑問も残る。感染抑制策と同様、経済再開には官主導の色彩が強く、民間主導の自律回復に結びつくかどうか、現時点では不透明だからだ。

 GDP成長率への寄与度を項目別に次のグラフに示した。コロナ禍前と後を比較すると、大きく伸びたのが政府による公共投資などを示す「総資本形成」(赤)なのが特徴だ。純輸出(緑)もプラスに転じたが、こちらはテレワークが広がった先進国のパソコン需要などが中心。つまり、一時的な要因である可能性が高い。

最終消費支出伸びはコロナ禍前の半分

 これに対し、自律回復に欠かせない最終消費支出(青)の伸びは、プラスに転じた2020年7~9月期でもコロナ禍前の半分程度にとどまる。

中国の実質GDP成長率と寄与度(前年同期比)

図表-2.JPG(出所)中国国家統計局

 次に、最終消費支出の大宗を占める、社会消費支出(=個人と公的部門向け消費財の小売総額)の前年同月比伸び率を月次で確認する。2020年8月にようやくプラスに転じたものの、11月時点でも前年同月比5.0%にとどまり、コロナ禍前の8%程度と比べると依然として水準は低い。地方政府は住民に消費クーポンを配布するなど消費喚起策を講じているが、それでも本格回復には至っていないのが実情だ。

社会消費支出(前年同月比)

図表-3.JPG(注)1~3月は合算値で比較
(出所)中国国家統計局

 2021年1月12日時点で入手可能な最新データである2020年11月の社会消費支出を見ると、その特徴は新車販売が全体を引っ張っていることだ。前述したように、全体では5.0%増だが、新車販売を除くと4.2%増まで下がってしまう。

「リベンジ消費」はいつまで続くか

 新車販売台数は、米中摩擦の激化に伴う先行き不透明感を背景に、長らく買い控えムードが強まり、2018年半ばから前年割れが続いていた。それにコロナ禍が加わり、2020年2月には前年同月比78.9%減まで落ち込んだ。

中国の新車販売台数

 図表-4.JPG(出所)中国自動車工業協会

 そこで習近平政権の強力な指導の下、地方政府が新車購入に対する購入補助金の支給などに乗り出し、2020年4月にプラスに転じた。足元の新車販売回復は、長らく続いていた買い控えの反動つまり「リベンジ消費」と、コロナ対策という官主導の押し上げによるものなのだ。

 もちろん、こうしたリベンジ消費は潜在的な需要を満たすまでの一過性に終わる可能性が高い。本格的に新車需要が回復するどうか予断を許さないのが現状だ。

コロナ禍でネット消費へシフト

 このように、社会消費支出は本格的な回復には至っていない。だがその中でも、インターネットを通じた消費に限っては大きく伸びている。2020年1~11月累計で社会消費支出全体が前年同期比4.8%減まで落ち込む中、ネット消費は15.7%増を記録。コロナ禍に伴い、実店舗からネット通販へ消費が大きくシフトしたためだ。

 10月は例年であれば、国慶節連休を利用した富裕層の海外旅行が増える。しかし2020年はそれが厳しく制限されたため、その分の消費がネットに移行した可能性が高い。こちらも特殊要因であり、消費の自律回復の表れとは言い難い。

 こうした中、習近平国家主席は2020年5月から「双循環」というキーワードを多用するようになった。国内循環と対外循環の相互促進による、経済発展といった意味である。ただし、その重点が前者にあることは明らかだ。

 実際、習主席は「国内大循環を主体として、国内外の双循環が互いに促進する新発展モデルを目指す」と繰り返している。

高い貯蓄率が消費を阻害

 それに従い、中国は前述の通り、消費クーポンなどによる経済刺激策を展開している。だが「国内大循環」すなわち内需拡大を実現するためには、解決すべき構造的な問題がある。中国の貯蓄率(=貯蓄総額の対GDP比)が米国や日本に比べて著しく高く、これが消費を妨げていると指摘されるからだ。国民は老後不安などを抱え、稼いだおカネをあまり消費に回せず、貯蓄に励まざるを得ないという構図が透けて見える。

 だから、貯蓄率を引き下げて消費を拡大するためには、所得格差の縮小や社会保障の整備が喫緊の課題となる。当然、習政権もそれを自覚しており、2021年春公表予定の第14期五カ年計画には、そのための取り組みが盛り込まれると予測される。

貯蓄総額の対GDP 比

図表-5.JPG(出所)世界銀行

若者のネット消費は旺盛だが...

 ただし、若者に限ればネットを中心に消費意欲は旺盛だ。2020年11月の「独身の日」というイベントはその象徴といえよう。

 2019年まで独身の日イベントは11月11日だけだったが、2020年は11月1~11日に期間を大幅に拡大。結果、ネット販売最大手アリババは売上高を2019年の2684億元(4.2兆円)から、4982億元(7.9兆円)へ倍増させた。

 今回は、ネット上で若者に大きな影響力を及ぼすインフルエンサーをイベント出品者が盛んに起用。ライブストリームによる販売が伸長し、全体の売上高を大きく押し上げた。こうした消費の新形態は今後、世代を超えて広がるか否か。それが、高い貯蓄率という構造問題の行方も左右するように思う。

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※この記事は、2021年1月5日発行のHeadLineに掲載されました。

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