技術者が語る 3Dプリンターのいろは

ポリアミド(PA)とは

本記事の内容が当てはまる造形方式

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ポリアミド(PA)の分類

ポリアミド(PA)は分子鎖にアミド結合(-NHCO-)の繰り返し単位が主鎖を構成する結晶性の線状ポリマーの総称です。過去の開発経緯から「ナイロン」と表現することも多いですがISOやJIS用語ではポリアミド(PA)に標準化されています。JIS K6900に示される用語の定義では「連鎖中の繰り返し構造の単位がすべてアミドの形の重合体」となっており、他のエンジニリングプラスチックに比較すると種類が非常に多いですが、ここでは脂肪族PA、半芳香族PA、全芳香族PAに分類します。
脂肪族PAは、アミド結合の繰り返し単位が主鎖を構成する結晶性の線状ポリマーで、一般に構成モノマーの炭素数を付けて、次の2種類に分類されます。
 1 PAp -〔-NH(CH2)p-1CO-〕- (PA6、PA11、PA12など)
 2 PAqr -〔-NH(CH2)q-NHCO-(CH2)r-2CO〕- (PA66、PA610など)
半芳香族PAは脂肪族PAに芳香族を導入したものです。芳香族を導入する事で耐熱性や強度が大幅に向上しています。
全芳香族PAは芳香族鎖とアミド結合から構成されるもので、「アラミド」と称しています。アラミドは線状ポリマーではありますが、非可塑性であるため成形材料としては使用されていません。溶液紡糸し延伸する事により高強度繊維として使用されています。

ポリアミド(PA)の特徴

画像:ポリアミド(PA)の特徴

PAは結晶性プラスチックであるため、油や有機溶剤に対する耐薬品性が優れています。結晶性プラスチックでは、結晶相は緻密な配列構造をとっていて分子間距離は小さいので結晶相には薬液の分子が拡散し難いのです。また、酸素や窒素、ガソリンなどの透過性が小さいです。ただし、蟻酸、氷酢酸、フェノール、塩化カルシウム(一部のナイロン)には膨潤又は溶解します。また、結晶性により物理的性質も影響を受け、結晶化度が大きくなると比重、引っ張り強さ、圧縮強さ、曲げ強さ、硬度、熱的性質が向上し、逆に衝撃強さ、伸び、吸水率、透明性は減少します。
結晶性の他にPAを大きく特徴付けているのはアミド結合です。分子鎖の中にあるアミド結合の水素と酸素が分子鎖同士で水素結合と呼ばれる結合を形成し、その水素結合が分子鎖同士を強く結びつけます。水素結合をつくる水素と他の原子の間には静電引力と、2つの原子間距離が短いことによる部分的な共有結合性の引力が働いています。そのために水素結合はかなり強い分子間力となります。PAはアミド結合があることによって水素結合を形成し、分子鎖間の水素結合が架橋の役割をすることによって、壊れ難い頑丈な構造となっています。
このようにPAは結晶性である事とアミド結合を有する事により耐薬品性と機械的性質に優れ、強靭で特に耐衝撃性が優れた材料となります。
さらにPAは強化材に対する親和性(濡れ性)が良いため、ガラス繊維、無機フィラーなどの充填材による補強効果が大きく、前述のPA本来の特徴に加えて機械的強度や熱変形温度が大幅に向上します。
このような特徴があるため、PAの用途としては自動車部品に使用されるケースが最も多く、エンジンカバーやマニホールド、、アクセルのペダルやドアハンドル、シートベルトなどあらゆる部分に使われています。

3Dプリンターの材料としてのポリアミド(PA)

画像:3Dプリンターの材料としてのポリアミド(PA)

プラスチックの粉末焼結積層造形法で使用されている材料の大半はPA12が占めています。
プラスチックの粉末焼結積層造形法は、焼結しようとする材料の結晶化温度と融点の間に粉末材料を予熱し、造形する箇所だけをレーザーで溶融させた後に再結晶化させ固化させる方式です。
PA12は多くの種類のPAの中でも融点が200℃を下回っており、装置の軸受やシール部材の機能を長期間維持できる温度での予熱で造形可能である事、またPAの中では親水性が低く粉末の吸水率も低い方である事から粉末焼結積層造形に有利な材料であること、PAの特徴である強靭さや耐寒衝撃性に優れる特性が得られることが、利用者に好まれている理由として挙げられます。PA12の粉末焼結積層造形品は自動車用や航空宇宙産業でも使用されています。

(佐藤 達哉)