技術者が語る 3Dプリンターのいろは

スペック表を見るポイント① ~分解能(積層ピッチ)と精度の話~

本記事の内容が当てはまる造形方式

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スペック表の気になるポイント

加工装置として3Dプリンターを見た場合、どれくらい精密な造形ができるのか?というのは気になるところです。そこでプリンターのスペック表を見てみると、「精度」と「分解能」という2種類の言葉が出ています。(後述しますが、精度については記載されていないケースも多いです。)Z方向の分解能については「積層ピッチ」という書き方が一般的ですので、そちらの方が見覚えがあるかもしれません。今回は加工装置のスペック表を見慣れていない方を想定し、読み解くためのポイントを解説します。ちょっとだけ小難しい話になりますが、他の解説記事を読むための参考にもなりますのでお付き合い下さい。

画像:スペック表の気になるポイント

分解能≠精度

精度と分解能は、どちらも装置の「細かさ・精密さ」を表しているイメージですが、この2つは異なるものです。各々が指すものの違いを理解するには、アナログ時計をイメージすると分りやすいです。時計表示の「分解能」は、一般的な三針式のものであればどれでも「1秒」です。一方で時計の「精度」は、手巻き時計の「1日で±10秒」から電波時計の「10万年で±1秒」まで様々です。

画像:分解能≠精度

分解能はその装置の「一番小さいひと刻み」を表しており、それは装置のしくみによって決まった値となります。一方で、精度はその装置が「はたらくときの正確さ・精密さ」であり、その装置が動いた結果を評価したものです。そのため、分解能は同じ機械であれば買ったときから決まった値ですが、精度はその装置が動く環境やメンテナンスの度合い、また1回1回の動作のばらつきによって、本来刻々と変化するものです。メーカーのカタログに記載されている精度は、あくまで出荷状態の装置をとある検査指標に従って計測したものと理解すべきです。

3Dプリンターの分解能・精度

3Dプリンターの分解能は、一般にz方向とXY方向とで違った値になります。Z方向の分解能である積層ピッチは造形方式によって大きく異なり、その値は必ずカタログに記載されています。XY方向の分解能は記載がないケースが多いですが、一部のマテリアルジェッティング方式のプリンターはDPI(Dot Per Inch)単位で表記があり、40~80μm程度のものが多いようです。
一方で、例えばFDM方式の積層ピッチは0.1~0.3mm程度ですが、実はこの値は産業用クラスのFDM装置でも安価なデスクトップFDM装置でもほとんど変わりません。ところが、造形の精度は樹脂の収縮や熱によるソリが大きく影響するため、装置の価格帯や造形条件によってかなり異なります。分解能が同じだからといって、精度も同じとは限らないのです。
3Dプリンターの精度は従来の加工装置にまだまだ追い付いていない面が多く、一部の産業クラスの機械を除いて精度の記載自体が無い場合が多いです。3Dプリンターの精度をできるだけ引き出し、メリットを存分に活かすための工夫については、今後の記事で触れていきたいと思います。

(飯塚 厚史)