技術者が語る 3Dプリンターのいろは

モデルの中空化と抜き穴で、造形時間短縮&品質向上

本記事の内容が当てはまる造形方式

  • SLS
中身の詰まった形状はちょっと厄介?

粉末焼結積層造形(SLS)方式のプリンターを使って、左図の卵形状の様に中身がぎっしり詰まった厚肉のモデルを造形すると、造形時間が掛かったり、造形物が重すぎたり、反りや変形で思った様な造形物が得られないことがあります。モデルの見た目は変えずにこれらの問題を避ける工夫として、モデル内に空洞領域を設ける中空化、またモデル内部の余分な材料を逃がす逃がし穴について説明します。

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    中身が詰まったモデル

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    中空化+逃がし穴のあるモデル

中空化すれば問題が防げる

厚肉のモデルを造形する場合、ちょうど卵の殻のように一定の肉厚を残して内部を空洞状にモデリングすることで、表面だけを焼き固めて、内部は粉状態の材料を残すことができます。レーザーの走査量が減り造形時間が短縮され、融解・凝固する体積が減るので反りが軽減されます。ただし、内部に密閉された状態の粉が残ったままですとなお反りや変形の原因になることもあります。また軽量化に対しては、粉を閉じ込めたままでは大きな効果はありません。
そこで、中空モデル化と同時に、逃し穴を空けて内部の粉を取り除ける様にしておくことをお勧めします(右図)。空洞部の粉を密閉しないことで造形物の反りや変形を防ぐことができ、造形の質が向上します。また、重量は殻の分だけなので大幅に軽減されます。3Dモデルの中空化と抜き穴の追加は、お使いの3Dモデリングソフトの「シェル化」や「ブーリアン」などのコマンドで簡単にできます。

モデリングのポイント

モデル内部を空洞にした際、壁として残す肉厚がどれだけ必要かは出力する素材によって様々ですが、概ね1~3mm程度の肉厚が必要です。中空化する際には必要な最小肉厚以上の厚さを残すようにしましょう。抜き穴はモデル底面の目立たない場所に空けて、フタ形状を別に造形しておけば、見た目は変わらずモデル内部は完全空洞の出来上がりです。

(中川 幸喜)

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