技術者が語る 3Dプリンターのいろは

おすすめの3Dプリンターとは?

本記事の内容が当てはまる造形方式

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最近注目を集める3Dプリンターですが、個人だけでなく、企業でも導入が進んでいます。
もし導入するなら機能や性能がいい3Dプリンターを購入したい、と考える方も多いのではないでしょうか。
そこでお客様からは「おすすめの3Dプリンターは何ですか」という質問をよくいただきます。
実は3Dプリンターはその用途や目的からおすすめする機種が全く異なってきます。
ここでは、3Dプリンター選定のポイントと実際の選定例をご紹介します。

3Dプリンターの選び方

3Dプリンターの選定は、まず造形方式、次に機種という順に進めていきます。3Dプリンターの造形方式には代表的な5つ にDirected Energy DepositionとSheet Laminationを加えた全7種類があり、同じ方式でも機種によってそれぞれ特長や使用できる材料が異なります。このため、利用目的に応じて適切な物を選定しないとせっかく購入しても思ったように活用することができない恐れがあります。
それでは、3Dプリンターの選定はどのように行ったら良いのでしょうか?

想定される利用状況から考えてみる

大企業の試作部門や試作加工を専門とする企業などで設置に必要なスペースや付帯設備(空調設備やサポート材洗浄装置等)を確保でき、かつ専任のオペレーターをアサインできるのであれば、光造形やSLS方式が利用できます。これらの方式は造形後の後処理のための付帯設備が必要で、かつ運用には高度な専門知識と技能を持った技術者が必要です。しかし、造形品質が高く且つランニングコストが低いため、毎月数百個という規模で造形を行う場合には極めて大きなメリットがあります。また、逆に前記のような人と場所の確保が難しいということであれば、マテリアルジェッティング方式やFDM方式を用いることで、比較的手軽に運用が可能です。

利用目的で考えてみる

3Dプリンターの利用目的が形状や意匠の確認が主で、造形物の強度よりも審美性や精度を求めるのであれば、光造形方式やマテリアルジェッティング方式が適しています。この2つの方式は紫外線硬化樹脂を造形するため、湿度や熱に弱いという共通の弱点をもっていますが、他の方式に比べて微細で高精度な造形が可能です。

逆に造形物の強度が必要で、実使用での試験をおこなったり、タッピングネジで組み付けを行ったりする場合にはSLS方式やFDM方式が適しています。ともにエンジニアリングプラスチックを直接造形できることから、造形物の強度が高くかつ高耐熱の材料も選択可能です。

実際の機種選定の例

ではここでリコーでの実際の機種選定の経過をご紹介します。

設置場所は専用の排気を準備したり、付帯設備を置いたりすることは出来ないところで、造形頻度としては1回/日程度。利用目的は工場で使う治具の製作や設計検討用の部品の試作がメインで、操作は設計者が行い専任のオペレーターを置くことはできないという条件でした。設置の環境から方式としてはマテリアルジェッティング方式もしくはFDM方式に絞られますが、治具応用が重要であるので軽量化と強度に優れるFDM方式を選択しました。

次に機種選定ですが、作りたい造形物のサイズから表1の3機種が候補となりました。3機種ともStratasys社のFDM方式の製品で造形サイズと造形出来る材料が同一の製品で、違いはサポート材とソフトウェアでした。

サポート材は機種AがBreakaway方式で、機種BとCがアルカリ水溶性サポートとなっています。アルカリ水溶性サポートはサポート除去にアルカリ水溶液が使え、複雑な形状でも容易にサポート材の除去が可能です。一方Breakaway方式はサポート除去を工具などで機械的に取り除く必要があり、複雑に入り組んだ形状などを作成する場合に、サポートが除去しきれない場合が生じます。このケースでは3Dプリンターならではの形状による付加価値の創造を重要なテーマしているため、形状制約の少ないアルカリ水溶性サポートが必要と考え、機種Aは除外しました。

次にソフトウェアですが、機種BはCatalystEX、機種CはInsightとなっています。CatalystEXは機能がシンプルで操作性の高いソフトウェアであり、ほとんど知識が無くても、高品質の造形が可能です。これに比べてInsightは非常に高機能なソフトウェアで、造形条件やツールパスなどの設定自由度が極めて高いという違いがあります。専門的な知識が必要にはなりますが、高度且つ高品質な造形を行うことができるため、機種Cを選定しました。(※Insightでもオートモードを利用すればCatalystEXと同様のシンプルな操作も可能)。

導入は2015年07月で本稿執筆時点で6ヶ月程度経過しています。稼動安定性は非常に高く、規定の清掃などはありますがほぼメンテナンスフリーと言って良く、今回の様に専任のオペレーターを配置できない状況では、非常に助かっています。また、ソフトウェアのInsightは非常に強力で、ツールパスを1スライス毎に自由に変更できるので、より高い造形品質を得ることができ、設計検討に貢献しています。

機種A機種B機種C
機種名 Dimension BST 1200es Dimension SST 1200es Fortus 250mc
積層ピッチ 254μm、330μm 254μm、330μm 178μm-254μm-330μm
造形材料 ABSplus(汎用ABS樹脂:9色) ABSplus (汎用ABS樹脂:9色) ABSplus-P430 (汎用ABS樹脂:9色)
サポート材料 離脱式サポート(Breakaway方式) アルカリ水溶性サポート アルカリ水溶性サポート
造形範囲(x, y, z) 254mm x 254mm x 305mm 254mm x 254mm x 305mm 254mm x 254mm x 305mm
ヘッドスピード 3.6 inch/s 3.6 inch/s 3.6 inch/s
本体サイズ (W)737mm x (D)838mm x (H)1143mm (W)737mm x (D)838mm x (H)1143mm (W)737mm x (D)838mm x (H)1143mm
本体重量 148kg 148kg 148g
電源および消費電力 AC100V 15A AC100V 15A AC100V 15A
ソフトウェア CatalystEX CatalystEX Insight

(山口 清)

3Dプリンターに関するよくある質問

3Dプリンターの情報を集め始めると、様々な疑問が浮かんでくる方も多いかもしれません。
ここでは、3Dプリンターに関するよくある質問をご紹介したいと思います。

3Dプリンターの価格はどれくらいですか。

弊社アンケート結果によると、100万円~500万円の価格帯の商品を導入している企業が多いようです。
3Dプリンターは10万円以下のものから5,000万円以上のものなどその価格帯は非常に幅広いです。
3Dプリンター導入企業412社にアンケートを取った結果としては100万円~500万円の3Dプリンターを導入している企業が約半数を占めていました。
※調査資料は以下より無料でダウンロードいただけます。

どのメーカーが一番人気ですか。

世界シェアNo.1はストラタシスですが、国内においてはメーカーの偏りが見られません。
3Dプリンターといえば、ストラタシス、3Dシステムズが二強と言われていますが、3Dプリンター導入企業412社にアンケートを取った結果、国内においては1メーカーに偏っている、といった結果にはなりませんでした。
自社でどの様な用途で活用するのか、といった点を明確化し、それに合った3Dプリンターを導入することが重要と言えそうです。
※調査資料は以下より無料でダウンロードいただけます。

造形物の強度や精度はどれくらいですか。

素材・材料はもちろん、出力方式によって異なります。
3Dプリンターは素材・材料と出力方式の組合せによって、様々な強度や精度を出力することができます。
試作品として用いられることが多い3Dプリンターの造形物ですが、最終製品に求められる品質を実現することも可能で、医療機器や自動車などの部品として造形物が使われていることもあります。

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